82.誰か私に大丈夫だよと言ってください!!?(切実)

「あの反応は……とうとう芽生えちゃったか〜!初々しくて可愛いわねぇ〜♡やっぱり弟達に渡すのは惜しくなったわね……どうにか私が2人まとめて貰えないかしら……」


などと、ヴィオル様がブツブツと呟いているが、今の私にはその言葉の意味を理解する機能は完全に働いていない。先程の妹の反応が頭から抜けないのである。


アレって……やっぱり嫌われたのよね……なんか私と目が合った瞬間に、避けるように出て行ったし……そりゃあそうよね……多分……アリーのファーストキスを私なんかが奪っちゃったんだし……嫌われても当然よね……そもそも、何であの時の私はあんな事をしたのよ!?冷静に考えたら、誰かが私達を助けに来てくれるのは明白だし!?その後、攻略対象者かヴィオル様が人工呼吸の魔法使ってくれたら良かった話じゃん!?少なくとも私がするよりはいいよね!!?


私が負の思考のスパイラルに陥ってるのに、ようやく察したらしいヴィオル様は笑顔で私の肩をポンポンと叩く。


「大丈夫!大丈夫!今はちょっと色々あって顔が見れないだけで、すぐに元のアンナちゃんが大好きなアリーちゃんに戻るから!ね?」


ヴィオル様が笑顔で私に励ましの言葉をくれる。何故だろう……ヴィオル様のその大丈夫には何故か力があるように感じた。まるで、国王様が民を安心させる為に「大丈夫」と言ってるような……


そうよね……大丈夫よね……うん大丈夫……大丈夫……大丈夫……よね……?誰か!?私に大丈夫だよと言ってください!!?(切実)


「とりあえず、ひとまず落ち着いたところで……クラーケンについて聞かせてくれない?」


ヴィオル様の言葉に思わず言葉が詰まる私。確かに、それはヴィオル様的には気になる話だものね……


「えっと……やっぱりヴィオル様の魔法が効いてたのか、クラーケンは結局海中で絶命したみたいで……その際に、クラーケンの拘束が解かれてアリーを救出出来ました」


私は苦笑しながら説明した。うん。嘘は言ってない。実際、ヴィオル様の魔法によるダメージがなかったら、放り投げて岩に激突したぐらいで死ななかっただろうし……


「ふ〜ん……海中で絶命した……ね……」


ヴィオル様はどことなく納得していない表情だったが、すぐに私に笑顔を向けて


「分かったわ。上には私がそのように報告しておくわ。アンナちゃんはひとまずまだゆっくり休んでちょうだい」


「はい。分かりました」


ヴィオルの言葉に従い、私は再びベッドに入った。起きたらまた元の姉妹関係でいられるのを祈りながら……



翌日、お父様やお母様に珍しく私はお小言をもらうハメになった。2人共心配してそう言ってくれてるのが分かっているので、私は甘んじてそのお小言を受け止めた。

それで、肝心のアリーの方はと言えば、最初こそ余所余所しさあったけれど、徐々にいつもの可愛い可愛い天使妹スマイルを私に向けてくれるようになり、私と普通に会話もしてくるようにもなったので、私はホッと安堵の溜息をついた。


で、皆さん気になってるのが、私が泳げるようになってない?という問題だろう。私もそう思ったから泳いでみたら、犬かきスタイルの泳ぎしか出来ず、やはり10m付近で溺れかけてしまい、近くに控えてもらったキョウカに救出してもらった。


どうやら、アレは火事場の馬鹿力ならぬ、火事場のシスコン力というなんとも私らしい結果だった……

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