閑話.ヴィオル・アスカルド
私、ヴィオル・アスカルドはとある生徒の魔法学のテスト結果を見て、思わず笑みを浮かべてしまいました。
「ヴィオルさん。何か面白い物でも見つけたんですか?」
私が笑ったのに気づいた同じ魔法省で働く男性がそう尋ねてきた。名前は……ごめんなさい。興味がないから覚えてないわ。
「とある生徒の魔法学のテスト結果を見ていたんです」
一応問われたので、私は素直に言葉を返した。
「へぇ〜……一体誰のですか?」
「アンナ・ステインローズ伯爵令嬢よ」
「へっ?アンナ・ステインローズ伯爵令嬢ですか?」
私の返答が意外だったのかポカンとした表情で私を見る彼。まぁ、無理もないかもしれないわね。今、魔法省で彼女に注目してる人は私ぐらいなものでしょう。あっ、いや、私と同じ五大トップの面々は注目していたわね。後、私の本当の父と母に、宮廷魔術師長も……
「あのぉ〜……こう言ってはなんですが……彼女に注目する要素はありませんよ。魔法学のテスト結果はそこまで良くないですし、実技試験の結果はご存知ですよね?」
彼は私にそう言ってきたが、私はそんな彼の言葉を無視した。後から聞いた話だと、魔法学のテストを採点したのは彼だったらしい。だとしたら、彼が魔法省で大成を果たす事はないわね。
アンナ・ステインローズ伯爵令嬢の魔法学のテスト結果は確かにあまりよろしくはない。けれど、それはこのテストが初級者向けの為に作ったテストだからだ。彼女がテストで回答したのは全部応用に応用を重ねた超上級者魔法使いが答えるものばかりだった。故に、このテストでは彼女のバツが多いのは仕方ない。
後、実技のテストは……アレは笑いを堪えるのに必死だったわね。久しぶりに腹筋に力を入れてしまったわ。
私は私の本当の身分のおかげで、人間観察には優れている。アレは、妹を傷つけずに負けようと必死に策を巡らしていたけど、妹の魅力にやられて倒れたという感じね。本当に周りの目がなかったら爆笑していたわ。
実は、私は私はアンナ・ステインローズ伯爵令嬢と会うのは今回が初めてじゃなかった。
あれは数年前、異常な魔力を感知した私はそこまで文字通り飛んで行った。場所が「龍の巣」だったから、暴れん坊の龍が出てきたのではないかと思ったのである。
しかし、その「龍の巣」から出てきたのは龍ではなく、まだ5、6歳ぐらいの少女アンナ・ステインローズだった。私は驚いて思わず何度も二度見してしまった。
以来、私は彼女の事が気になってひっそりと観察を続けてたら、彼女は自分の領地のスラム街を新しい町に生まれ変わらせ、次々とその手腕でその町からいろんな物を開発させていった。
けれど、1番驚いたのは彼女が龍を従えていた事だ。龍はプライドが高い生き物だから、自分より弱い人間の言葉に従うなんてあり得ない。けど、一つだけ可能性は考えられる。もし、あの時感じた異常なまでの魔力の持ち主が彼女だったなら……私は最早それしか考えられなかった。
以来、私は彼女をどうやって私側に誘うか考えていた。もちろん双子の妹を含めて。美人双子を侍らせる……なんて素敵なのかしら……おっと……いけないいけない……つい本音が……
私が今年この学園で教員としてやって来たのもそれが目的である。どうにかしてあの双子を私の元に誘いたい。ふふふ……なかなか難しいミッションだけど、ミッションが難しいければ難しい程燃えるわね……
私はあの双子姉妹を私の元に誘う策を巡らせるのに楽しく笑ったつもりだったが、その場にいた職員達には、黒い笑みを浮かべているように見えたらしい。おかしいわね?こんなに楽しく策を巡らせていたというのに……
「まぁ、弟達があの子達を堕としてくれた簡単なんだけど、ヴァンはクソ真面目な上に妹ちゃんに惚れてるみたいだし、カインはなんだかんだでヘタレな所があるから難しいわねぇ〜。それに、あの双子姉妹揃って自覚ないみたいだけど、お互いにそういう感情があるみたいだし。私的にもそっちを応援したいから、私が頑張るしかないか……」
幸いにも私が漏らしたこの言葉は誰の耳に入る事はなかった。
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