64.エリザベスvsアリー

ヴィオル・アスカルド侯爵令嬢の試合開始宣言と同時に、エリザベス公爵令嬢が雷の魔法をアリーに向けて放ち始める。アリーはそれを簡単な魔法でいなしながら躱していく。へぇ〜……エリザベス公爵令嬢は雷属性の魔力の持ち主なのね〜……。


「う〜ん……やっぱりあの人は本当にエリザベス様なんでしょうか……?」


キョウカは首を傾げながらエリザベス公爵令嬢の戦いぶりを見てそう言った。


「えっ?何?もしかしてエリザベス様って雷属性じゃないの?」


私はキョウカの言葉に疑問を感じてそう尋ねると、キョウカは首を横に振って答えた。


「いえ。雷属性なのは間違いないです。けど……扱い方が雑というか……前に魔法の扱い方をレクチャーした時は、もっと雷を巧みに操ってらっしゃったのに、今はただひたすらに雷をアリー様にぶつけようとしてるだけというか……そんな感じで……」


キョウカの言葉に私はなるほどと得心した。確かに、エリザベス公爵令嬢の戦い方は、ひたすらに雷の魔法をアリーにぶつけるだけな感じである。まぁ、その雷自体は強いので、まだまだ魔法が未熟なこの場にいた娘達なら、この戦い方でも十分勝てたであろう。

しかし、アリーは違う。アリーは全属性持ちの魔力数値測定不可能な程の持ち主だった為、お父様の知り合いの宮廷魔術師様が、アリーに魔法の使い方をレクチャーしてくださったのだ。故に、アリーではこの程度の魔法戦闘で敗れる事はない。


案の定、アリーは全ての雷を躱してエリザベス公爵令嬢の首元に魔力を込めた手刀を近づけた。もし、これを当てたら、エリザベス公爵令嬢の首は切り裂かれていただろう。


「そこまで!勝者!アリー・ステインローズ!」


ヴィオル・アスカルド侯爵令嬢がアリーの勝利宣言をすると、エリザベス公爵令嬢は憎々しげな瞳でアリーを睨みつけ、足早に取り巻きや従者も付けずにその場を去って行ってしまった。私は、そんなエリザベス公爵令嬢をただ呆然と見送っていた。


「う〜ん……エリザベス様はカイン王子を慕ってらっしゃいましたし、アリー様を相当恨んでるのかもしれませんね……」


去って行くエリザベス公爵令嬢の後ろ姿を見たキョウカがボソリとそう呟いた。けど、私にはそれだけじゃない何かを感じていた。


そのエリザベス公爵令嬢の去って行く後ろ姿が、ゲームの「私」と重なって見えたから……

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