63.全てはシナリオ通りです(前話の件も含めて)

「ふっ、全ては計算通りに進んでるわね。私が妹を傷つけるなんてあってはならないしね」


私はもの凄いドヤ顔でそう言うと、キョウカが「本当ですか?」と言わんばかりにジト目で睨んできたので、私はキョウカのお尻を叩いた。その場で身悶えるキョウカ。

そして、それを目撃した生徒達からヒソヒソ話が聞こえてくる。内容は恐らく、勝負に負けて私がメイドに八つ当たりしているとかであろう。で、キョウカの身悶えてる姿は、他の人には叩かれて泣き崩れてるように見えるらしい。まぁ、別に誰に何と言われても気にしないんだけど、何故このキョウカを見てそう判断出来るのか解せない……


とりあえず、今は実技試験に注目しよう。この試験試合は勝ち抜き制なので、私に勝ったアリーは他の生徒とも対戦して圧勝している。うん。流石は私の最高に可愛いくて最高に素晴らしい妹。可愛いだけじゃなく強いなんてもう最高最強の妹だわ。


そんな感じで、妹に魅入っていた私だったけれど、別の試合場所でどよめきが起き、アリーの試合もちょうどまた圧勝して終わったので、そちらを振り向くと、そこは男子の試験試合場だった。


「勝者!リンクス・ヴァルター!」


ヴィオル・アスカルド侯爵令嬢がそう勝利宣言を告げたのは、木剣を持って佇む1人の青年だった。試合に勝っただけで、このリンクスという青年が注目されるはずがない。問題はリンクスの対戦相手だった。


「いや……参ったよ。私も身分故にそれなりに鍛えられてるのだが……やはり上には上があるものだね」


リンクスが倒した相手、それはウィンドガル王国の第1王子であるカイン王子だったのだ。しかも、リンクスはどこかの貴族でもない平民。どよめきが起きるのも無理もない。


「勉強させてもらったよ。ありがとう」


カイン王子は爽やかな笑顔を浮かべて手を差し握手を求める。リンクスはそれに黙って応じる。それを見ていた人々はカイン王子の懐の深さに賞賛の拍手を起こす。が、一部の人には、リンクスに対して冷ややかな視線を向けてる者がいる。平民が王族に何するんだというやつだろう。


「カイン王子に勝ったとなれば、あのリンクスという青年は今年の男子陣の中で1番強いという事になりますね〜」


いつのまにか復帰したキョウカがそう呟いた。

うん。実はそれは私もよく知ってる。何故ならこれもゲームのシナリオ通りで、そして、彼こそが「リリカルスクールラブ」のもう1人の攻略対象者なのだ。私、この後彼がどうアリーと関わってくのかも知ってるが、まだそれはほんの少し先の話である。


「それでは、これより女子の部の最後の試合、エリザベス・マグダエル公爵と、アリー・ステインローズ伯爵の模擬試合試験を開始します!」


どうやら最後まで勝ち抜いた女子がアリーと、あのエリザベス・マグダエル公爵令嬢のようだ。


何やらゲームとは違う予感に、私の胸は言い知れぬ不安が広がっていた……

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