外話.桐島という少女の話
これは、アンナやアリーがいる世界と別の世界のお話
17歳の普通の女子高生である桐島は、教室の自分の机に突っ伏していた。
「うぅ……眠い……」
桐島は寝不足だった。そんな桐島にクラスメイトで親友の1人が声をかけてきた。
「きっしー!おは〜!って……なんか眠そうね……早寝が基本のきっしーが寝不足とかなんかあったの?」
「あぁ……まっきー……おは〜……」
桐島は近づいてきた自分の親友である牧野 陽子に、机に突っ伏したまま挨拶をした。桐島のその様子に牧野は苦笑し察する。
「はは〜ん……さては……昨日はずっと「リリカルスクールラブ」をやっていたわね!」
「うぐっ……!?」
桐島は寝不足の原因を言い当てられ、思わず変な声を出す。そうこうしているうちに、桐島の周りには他の女友達が数人集まってきた。
「まっきー!きっしー!おは〜!って、なんかきっしーは眠そうだね〜」
「きっしーが寝不足なんて珍しい……小学生でも珍しいぐらいの早い時間に寝るきっしーが……」
「なんかあったん?」
桐島の数人の女友達は、牧野と同じく桐島が寝不足なのを不思議に思い尋ねてくる。牧野は苦笑しながら説明をする。
「昨日、きっしーがあれだけ待ち望んでた「リリカルスクールラブ」の発売日でしょ。だから……ねぇ……」
『あぁ……』
牧野の説明でこの場にいた全員理解した。
桐島は「リリカルスクールラブ」という乙女ゲームが発売する前から、「ヒロインの女の子が可愛い!しかも!妹キャラとか最高すぎる!」と騒いでいたので、そんな桐島が待望の乙女ゲームを手に入れてはしゃがない訳がない。恐らくは、朝になるまでプレイしていたんだろうと周りの女子達は察した。
「で、きっしーはどこまで進んだん?誰か1人ぐらいは攻略対象者を堕としたの?」
牧野は桐島と同じレベルの乙女ゲームマニアである。が、「リリカルスクールラブ」は予算の都合もあり、まだ手を出していなかったので、牧野は桐島にプレイ感想を聞きたくてそう尋ねたのだが……
「えっ?全然進んでないよ。OP映像のヒロインを何度も拝んでる内に気づいたら朝になってた」
と、返ってきたので、牧野を含めた女子全員が桐島を見て呆れた溜息をついた。
「相変わらずだよね〜……きっしーの妹キャラ好き……」
「妹なんていいもんじゃないよ。生意気だし。すぐに人の物を盗ろうとするし」
「止めてぇ〜!!?私の妹理想像を壊すの止めてぇ〜!!?」
桐島は両耳を塞いで聞こえないアピールをする。それを見た者は更に溜息をつく。
「なんていうか……きっしーって残念な美少女よね……せっかく見た目は実はそんなに悪くないのに、コレだし……」
「まぁ……きっしーは現実の男性との恋愛は無理だし……ね……」
牧野は苦笑しながらそう言った。ここにいる桐島の女友達は桐島の女友達は桐島が男性との恋愛が出来ない理由を知ってるのだが、桐島のこの様子を見る度になんとかしないとなという感情が湧いてしまうのである。
「大丈夫!私は全ての妹キャラを幸せに導く!それこそが私の使命よ!!」
桐島は立ち上がってそう宣言した。その桐島からは、メラメラと「妹萌」と言わんばかりの炎が立ち昇ってるように見えて、牧野を含めたその場にいた全員が再び深い溜息をついた。
「けど……きっしーみたいなタイプって何か凄い恋愛とかしそうじゃない?」
「凄い恋愛って……本当に妹タイプの女の子と付き合うとか?」
「いや、それは割とあり得そうじゃない。きっしーだし」
「う〜ん……だったら……最近よくweb小説であるような悪役令嬢転生ものみたいに、きっしーが「リリカルスクールラブ」の悪役令嬢に転生するとか!確か、「リリカルスクールラブ」の悪役令嬢はヒロインの姉だったはずだし!」
「いやいや!流石にそんな非現実的な事はないしょ!それはあくまでも小説の世界の話だけでしょ!」
「だよねぇ〜!」
牧野が言った意見を、桐島の女友達は笑って否定し、牧野も冗談で言った為、笑って否定の言葉に同調し、桐島がどんなあり得ない恋愛を起こすかについて再び笑いながら語り合った。
しかし、その桐島がこの数日後亡くなり、「リリカルスクールラブ」の世界の悪役令嬢アンナ・ステインローズに転生するのを、牧野を含めた女友達だけでなく、桐島当人すらも知るよしもなかった……
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