60.波乱の開幕
うぅ……眠い……
「お姉様。大丈夫ですか?」
コテンと首を傾げて私にそう尋ねてくる私の可愛い可愛い妹が今日も絶好調に可愛い!!しかも!今日はついにあの「リリカルスクール」の制服を身に纏っている!
「リリカルスクール」の制服は白を基調にした制服で、最近はアリーには黒も似合うと自覚していたけど、やっぱり天使な可愛い妹には白が似合うわね!うん!
「お姉様……?」
おっと……返事のない私をアリーが不思議そうに見つめているわ。
「大丈夫よ。アリー。アリーを見たら眠気も吹っ飛んだわ」
「?そうですか?お姉様のお役に立てたなら良かったです!」
とってもキラキラ笑顔でそう応える妹に思わず気絶してしまいそうになるのを私は必死に堪えた。これ以上妹に心配をかける訳にはいかないからね。
それに、今日から「リリカルスクール」に通うのだからしっかりと気を引き締めていかないと……
改めて、「リリカルスクール」とは、魔力検査により魔力があると分かった子が、15歳になってから3年間通う全寮制の学園である。
このウィンドガル王国は身分差別をするような国ではないが、完全に無いという訳ではないので、寮は平民と貴族とで分けられている。あくまで防犯の為だ。
で、貴族・王族の方は一応専属の従者を2人まで寮の部屋に連れて行けるので、私はキョウカ。アリーはヒエンとレイカを連れて学園に向かっている。
そう考えると、ゲームと現実の私の状況とは違う点が2つあるのよね……
・私は妹に冷たくあたっていない(むしろ溺愛してます!)
・私とアリーが専属のメイドを連れて行ってる(ゲームだと私の専属になりたがらない従者がいるのに、アリーが気をつかい専属をつけず学園に通っていた)
ゲームとは違うこの2点が、果たして今後どうなるのか分からないけれど、私のやるべき事はただ一つ!この学園でちゃんとアリーに相応しい人を見つけて!アリーにハッピーエンドを迎えてもらう!頑張るわよ!私!
「アリー様。アンナ様」
「到着しましたよ」
ヒエンとレイカが学園に到着したのを私達に告げる。ちなみに、キョウカは馬車を動かしている。なんでも、馬車を動かした経験もあるのだそうだ。本当……あの性癖さえなければ完璧なメイドなんだけどなぁ〜……
とりあえず、私達は馬車から降りて、学園の正門前で学園を見つめた。その学園は、ゲームで何度も見たやはり貴族・王族も通うだけあってかなり豪華な感じのする学園が目の前にあった。そうか……今日からここが私の戦場になる訳ね……私は改めて気合を入れて、アリーと一緒に学園に入ろうとすると……
ドンッ!!!
「きゃあぁ!!?」
アリーが誰かにぶつかって、私が超素早い動きでアリーが倒れそうになるのを支え、ぶつかってきた相手を睨んだが……
「失礼。そんなところで突っ立っていたら邪魔よ」
アリーにぶつかってきた相手は、王子様達の誕生日パーティーの時に、アリーに文句をつけてきたあのエリザベス・マグダエル公爵令嬢だった。
エリザベス・マグダエル公爵令嬢はそれだけ告げると、従者と数人の取り巻きを連れて、さっさと学園に向かって行った。私はそれをただ呆然と眺めていた。
普段の私ならぶつかってきた彼女にくってかかり、ヒエンとレイカに取り抑えられるパターンになるはずなのに、この時の私は、エリザベス公爵令嬢から漂ってくる何とも言えない雰囲気に言葉が出なくなってしまったのだ。
「あれは……本当にエリザベス様……ですか……?」
かつて仕えていたはずのキョウカですら疑問に感じる程、今のエリザベス公爵令嬢は以前会った時よりも違う存在になってるようだ。
ゲームとは違う点がもう一つ出来てしまったわね……
・ゲームには出てこないエリザベス・マグダエル公爵令嬢の様子がどこかおかしい
私達の学園生活はいきなり波乱の展開で幕開けした……
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