59.抱きつき癖にはご用心

最初に言っておくと、みんなよく誤解するけど、私にはそっちの気がある訳じゃない。ただ、妹キャラが好きで、姉としてその妹キャラを愛でて、妹を幸せに導いてやりたいという気持ちが強いだけだ。断じてそっちの気がある訳じゃない。



のだけれど……アカン……これはあきまへんわ……



思わず使った事がない関西弁になってしまう程にこの状況は色々マズい。そっちの気がないと言ってる私でも目覚めてしまいそうになる程マズい。

はい。そこの。アッサリ陥落かよって言ったそこのアナタ。だったら、アナタにこの状況が耐えられますか!?目の前に綺麗で可愛い天使のような顔が間近にあって!若干身体を密着してるから!こう!可愛い可愛い妹の柔らかくて暖かい身体に触れて!?アナタは耐えられるというんですか!?無理ですね!断言するわ!絶対100人の女性が100人共この状況になったらそっちの気に目覚めるわ!間違いないわ!!


はぁ……はぁ…………うん。とりあえず一旦落ち着けないけど、なるべく落ち着こう。って言うか、こんなイベントはゲームに無かったはずなんだけど……学園に通う前にアンナと添い寝したのかしら?って、ゲームの「私」にそれはないか……


「……良かった……」


唐突に呟いたアリーの言葉に、私は不思議に思いアリーを見た。


「夢を……見たんです……若干曖昧だけど……怖い顔をしたお姉様が……私を……」


アリーはそこで口を噤んだが、この至近距離なので、アリーが漏らした言葉は私にハッキリと聞こえていた。


ナイフで刺した……と……


何故……アリーがゲーム時のバットエンドを夢に見たのか……それはよく分からない。けど、その夢のせいでアリーが震えてるのだけは確かだ。だったら、私がやるべき事は一つだけだ。


「大丈夫よ。アリー」


「……お姉様……?」


私はアリーをそっと私の方まで引き寄せると、彼女の頭を優しく撫でた。


「約束したでしょ。あなたの事は何があっても必ず守るって。だから、アリーは何も心配する必要はないわ」


私はゆっくりゆっくりアリーの髪を撫でならがらそう言った。それはまるで、幼子をあやすようにゆっくりと……


「お姉様……お姉様はやっぱり……私の大好きな……おねえ……さ……ま……」


私に頭を撫でられて安心したのか、アリー目を閉じて寝息をたてた。良かった。眠れたみたいね。また悪夢を見なければいいのだけど……


アリーが完全に寝静まったのを確認すると、私はベッドから出る決意をした。このままだと、私の理性的な何かが危ないからね。こんなに震えて私を頼ってきた妹を襲うなんて最低なマネをする訳にはいかないからね……


が、しかし……


「ん〜……」


「ッ!?ちょっ……!!?」


私は思わず声をあげそうになったのをどうにか堪えた。せっかく眠ってるアリーを起こす訳にはいかないしね。


けど……どうしよう……私……アリーに抱きつかれてるんですけどぉ〜ーーーーーーーーーーーー!!!!?

ちょっ!?コレ!?さっきの密着の比じゃないんだけど!?明らかにアリーの柔らかな2つの膨らみが私の身体に密着して……って!?私はどこの変態じゃあぁ〜!!?

しかも、振り払おうにも意外にアリーってば力強ぉ!!?無理に振り払おうとしたらアリーを起こしてしまうし……本当に参ったわね……

って言うか……アリーってば寝る際に抱きつく癖があったのね。これは新発見だわ。私が密かに書いてる「アリーの成長録」に記載しとかないとね!って!?そういう問題じゃないでしょ!!?私!!?


私はとにかくアリーを襲う訳にはいかないと、ひたすら般若心経を唱えたり、前世の男子がよく母親の全裸を想像したら萎えるというのを参考に、母親の全裸を想像してやり過ごす事にした。もちろん、今世ではなく前世の母親の全裸だ。前世のお母さん申し訳ない。けど、お母さんのおかげで娘は間違いを犯さずに済んだのだから許して欲しい……


そして、当然私は翌日寝不足に陥った……

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