30.私達は……仲良し姉妹……ではなかったかもしれない……
何事も順調に進んでいると、落とし穴に気づいてしまうのはよくある話である。
とにかく、ゲーム開始まで色々順調だった。カイン王子・ヴァン王子・グラン様・義弟のケインは完全にアリーにほの字で、アリーにもうアプローチしまくっている。後は、地位も名誉もあるこの攻略対象者達の中から、妹に相応しいかどうかを私がしっかりと見極めるだけだ。
後、ノイエル町もまた順調だった。最近はキョウカの故郷にコーヒー豆がある事が分かり、キョウカに頼んでコーヒー豆を融通してもらうよう頼み、コーヒーを流行らせたら、紳士貴族に大流行した。リーガルやお父様は最近もっぱら紅茶からコーヒー派に変わっていった。
こうして、順調に色々進んでいってる時、私は重大な落とし穴にはまってる事に気づかされる事になる。それは、アリーがもうすぐ14歳の誕生日を迎え、ゲーム開始まで後1年ちょいとなったある日の事だった……
その日、珍しく私は(一応)婚約者であるヴァン王子に王都に出かけないかと誘われた。これはいわゆるデートの誘いのように見えるが……
「もうすぐアリー嬢の誕生日だから選ぶのを手伝ってくれないか?」
と、言うものだった。まぁ、私もアリーの誕生日プレゼントを買おうと思っていたので、ちょうど良かったので受け入れた。
「それで……アリー嬢は何をあげれば喜ぶだろうか?」
「そうですね〜……あの娘って私に似て服や宝石の類は欲しがりませんからね〜……」
「そういえば貴方も物をあまり欲しがらないな……」
「私には妹の喜ぶ笑顔さえ見れれば十分なプレゼントなので」
私がいつもの妹愛を語ったら「そうか……」と溜息をつかれた。
「けど、しいて言うなら食べ物ですかね?あの娘、顔に似合わずよく食べますし……」
そう。アリーはあんな見た目から想像出来ない程の大食いなのである。あんだけ食べても全く太らないのも謎だ。きっと、食べた栄養は全部あの娘の可愛さと美しさに行ってるのね。
ちなみに、妹とは対象的に私は食が細い。これは前世からそうだった。今世なら大丈夫かと思い、妹に合わせて食べたらアッサリお腹を壊して散々な目にあった。
「食べ物か……確かにそれが一番いいのかもしれないが……その……出来れば、手元に残る物を渡したいというか……」
なるほど。好きな女性に、自分が渡した物をずっと持っていてもらいたいというのが、今世の男性の考え方みたいだからね〜……若干重たいわね〜……
「それはそうと……今日はすまなかったな。本当は、いつもなら兄と一緒に選ぶんだが、今日は兄は外せない用があってな……」
「えっ?カイン王子と出かけられるんですか!?」
これは正直意外だった。いや、2人の兄弟仲が悪いとは思ってなかったけど……
「まぁ、王族だからそう何度もは出かけられないが、よく2人で王都に繰り出す事はしているさ」
「はぁ〜……そうだったんですね〜……」
流石にゲームにも描かれてない設定だったから初耳だ。お2人が仲良く王都でお出かけなんてね〜……兄弟仲が本当にいいのね〜……
けど!私達だって負けてないわよ!私達の姉妹仲も良好よ!だって、私達だってよく2人で……2人で……ん……?
そう。ここで私は重大な落とし穴に気づいてしまった。
「ッ!?おい!?どうした!?何があった!!?」
私が思わず地に倒れ伏せたので、ヴァン王子が慌てて声をかけてきた。
「…………ヴァン王子……どうしましょう……私……妹に実は嫌われているのかもしれません……」
「はぁ?いや……そんなことないと思うが……」
「そんなことあるんです……だって……だって……私は……私達は………………姉妹仲良く2人で出かけた事がないんですッ!!!」
「はぁ!?」
ヴァン王子は王子とは思えないほどのすっとんきょうな声をあげた。
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