29.義弟は妹に陥落し、姉は妹の為働く

俺はアルフ=ステインローズに呼び出されていた。呼び出された理由は分かっている。俺の父……と言っても、父とは思った事はないが、そいつの罪が暴かれて投獄される事になった。

おそらく、そいつから聞かされた事だろう……俺が……そいつの頼みで、アルフ=ステインローズ伯爵の娘に手を出そうとした事も……

恐らく俺は告発されるだろう。アルフ=ステインローズ伯爵は娘に甘い父親だという噂がある。俺の……俺達の目的を知ったら……


「君を呼び出したの他でもない。君は君の父……私の兄の事は聞いてるね?」


「……はい」


やはり……案の定話はその事だった……俺はどうなっても構わない……けれど……


「心配しなくてもいい。君と一緒にあの屋敷にいた子供達なら全員解放されて、ノイエル町にある孤児院に保護されたよ」


「ッ!!?」


アルフ=ステインローズ伯爵の言葉に、俺は驚き固まってしまった。


「マダムAに言われてね。あの屋敷にいる子供達全員をステインローズ伯爵家で引き取るのは無理だろうからと、ノイエル町に預けてみないかと言われたよ。ノイエル町はまだ発展したばかりで、人手不足な所があるから、次代の育成は歓迎したいのだそうだ」


アルフ=ステインローズ伯爵の言葉に、俺の全身は震えていた。そうか……あいつらは……無事に保護される形になったんだな……


あんな屋敷にいたせいか、俺を含めた奴隷商人に目をつけられなかった子供達の間で、擬似家族のような仲間意識が芽生えたいた。だから、俺は奴に自分の弟の娘を誘惑するよう頼まれた時に……


「条件がある。この屋敷にいる子供達を全員解放しろ。そうすれば必ずあんたの言う通り、その娘を口説き落としてみせる」


と、提案した。奴はニヤニヤと笑いながらその条件を飲んだ。恐らくは、俺がステインローズ伯爵家に行けば、他の奴らはもう用済みだと思ったのかもしれない。俺は奴の言葉を信じて行動に移したのだった。


「それで……君はどうしたい……?」


「どうしたい……とは……?」


言ってる意味が分からなかった。俺はある意味奴の言いなりで動いた実行犯だ。同じように捕まる立場のはずだ。


「先に言うのを忘れていたな。私は君の罪は問わない。というよりも問えないというのが正しいな。私は疎遠になったとはいえ、兄を諌めてやる事が出来なかった。そのせいで君達を傷つけてしまった。本当に申し訳ない」


そう言ってアルフ=ステインローズ伯爵は俺に頭を下げた。正直、頭を下げられるとは思わず、動揺する俺をよそに、アルフ=ステインローズ伯爵は更に言葉を続けた。


「ノイエル町の孤児院は信用出来る場所だ。私はそこにあの子達が立派に育つまでの寄付金も送った。君の分も含めてだ。だから、改めて問う。君はどうすのか?と、あの子達と一緒にノイエル町の孤児院で生活を共にするか、それとも……」


アルフ=ステインローズ伯爵はそこで一旦止め、俺の目をジッと見つめて……


「このまま私達と一緒に暮らすのかを……」


その言葉に……俺は……溢れ出る涙を抑えられなかった……この人は……こんな俺を……まだ家族にしてくれるというのか……!?しかも……あいつらの支援金まで払ってくれて……!

俺はその場ですぐに跪いて頭を下げた。


「このまま……!俺をここに……!あいつらに送ってくれた支援金の分……!ステインローズ伯爵家の為に働かせてください……!」


俺は涙ながらにそう答えた。


「そうか……ならば、頭を上げなさい。君はもう……私達の家族なんだから……」


アルフ=ステインローズ伯爵が微笑みながら俺にそう言ってくれた。そのすぐ後ろでは、俺が妙なアプローチを繰り返して迷惑をかけたアリー=ステインローズが柔らかな微笑みを浮かべていた。


あぁ!君には散々迷惑をかけていたというのに!こんな俺を君は許してくれるのか!?俺には彼女が天女に見えた。いや、天女そのものかもしれない。


俺は誓った。このステインローズ伯爵家と……彼女を守り抜くと……





「アレは完全にアリーに堕ちたわね」


私も同じだから義弟の気持ちはよく分かった。きっと、彼には妹が天女に見えた事だろう。本当はそれよりももっと神々しいのだが……


「けど、感謝する相手間違ってますよね〜……彼を救ったのは全部お嬢様なのに……」


「あら?私は別に彼を救っちゃいないわよ。私はただ、国民の義務で犯罪者突き出しただけだし、子供達は次代に欲しいから引き取っただけ。むしろ、支援金をかなり貰ってしまって申し訳ない気分だわ……」


若干不満そうなキョウカに私はそう答えた。本当に自分は彼を救った覚えはない。あくまで自分の為、 妹の為だ。


さぁ!私も義弟に負けないよう!妹の為にバンバン稼ぐわよ!

私は決意を新たにし、まずは手始めにコーヒーを作れたらなぁ〜と頭を巡らせるのだった……

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