23.契約婚約(アンナ視点)
さて、お父様に言われ私はヴァン王子と、アリーはカイン王子と婚約を結ぶ事になった。で、その翌日に私はヴァン王子に呼び出しを受けていた。まぁ、呼び出された理由は分かっているのだけれどね……
「アンナ嬢。すまないとは思っているが、この婚約を無かった事にしてもらえないだろうか……」
と、ヴァン王子は私が部屋に入るなり開口一番そう告げてきた。やっぱりね〜……こうもゲーム通りだと驚きもないわね〜……。
さて、ゲームの「私」はひたすらヴァン王子に詰め寄って懇願して、ヴァン王子が根負けして婚約関係を続けるんだったかな。
けど、私的にはこの婚約に関してはものすごくどうでもいいのよね〜……今更私がキズモノ扱いされようが、私の評判なんてそんなもんだしね〜。そもそも、前世で知り合いの姉さんが同じ人と離婚と結婚を繰り返してるのも見てきた訳だしね〜……。
「あの……その……大丈夫か……?」
おっと……随分と思考に耽っていたせいで王子の存在をうっかり忘れてたわ……う〜ん……正直ヴァン王子の望み通りに婚約は解消してもいいんだけど、やはりゲームの設定を崩してアリーがバットエンドになってしまう可能性を避けたいし、何より……ヴァン王子との婚約関係は色々使えそうなのよね〜……。
「婚約関係を解消したいのは何故ですか?」
「それは…………私は……君以外に好きな人がいて……そんな男と一緒にいても、君の為にはならないだろうと思って……」
とりあえず確認の質問だったが、とても真面目に答えるヴァン王子。設定通り本当にまっすぐで真面目な王子様なのね〜……。
「その好きな人は私の妹ですか?」
「………………」
その私の質問にはヴァン王子は沈黙で返した。恐らくは妹を守る為だろう。けど、沈黙も肯定の意というのをこの王子様は知らないみたいだ。
「分かりました。婚約は解消するようにお父様達にお願いしましょう」
「本当か?」
「はい。ただし、条件が一つだけ」
「条件……?」
私の条件という言葉にヴァン王子は若干後ずさった。多額の慰謝料請求するとでも思ってるのかしら?別にお金には困ってないのだけど……
「ヴァン王子も魔力確認されてますから、私達と同じくリリカルスクールに通いますよね?」
「あぁ……そうだが……それが一体……?」
「そのリリカルスクールに通う一年間までの間だけでも婚約関係を結んでいただけないでしょうか?」
そう。私の条件はゲームの設定通りに婚約関係を続けてほしいというものだ。これにヴァン王子は首を傾げて不思議そうにしていた。
「何故期間を設けるんだ?」
ふむ。これは至極当然の質問か……さて……どう答えるべきかな……まぁ、ここは素直に答えるべきか……
「妹は可愛いですよね」
「はぁ?」
「昔は舌ったらずな感じでお姉様って呼んでいたんですけど、今じゃ綺麗な魅惑的な声でお姉様って呼ぶんですよ。それはもう、私はそれに耐えるのにどれだけ時間わ要した事か……しかも、最近は10歳にして女性らしい魅力が増してきてるので、言い寄るハエどもの視線が煩わしくて、どうやって排除すべきか目下悩みどころで……それから……」
「ちょっ!?ちょっと待てくれ!!?何か話がズレてる気がするのだが!!?」
おっと……思わず素直に妹の魅力を語ってしまった。私はコホンと一つ咳払いをした。
「申し訳ありません。まぁ、私はこれぐらい妹を愛してるのです」
「それは十分伝わったが、確か……君は……その……」
「あぁ、私が妹より劣ってるから妹を憎んでるという噂は、あえて私自ら流しておきました。そうしたら、私を利用して妹を害そうとする敵が勝手にやって来るでしょ」
私がアッサリとそう言い放つと、ヴァン王子は口をポカンと開けて固まったがすぐに復帰した。
「君が妹を大事にしてるのは分かった。が、それが婚約関係を期間を設けて継続したいのとどう関係が……?」
「ヴァン王子。私は別に私がキズモノと呼ばれようが別にどうだっていいんですよ」
私は自分の思った事を口にすると、ヴァン王子はひどく驚いていた。まぁ、一度婚約破棄され、キズモノとされた令嬢は、今後婚約を結びたいって人は現れないのが貴族の常識だから無理もないわね……。
「私にとっては、妹さえ幸せになってくれるなら私はどうなったって構わないんです。更に言えば、妹を幸せにしてくれるなら、カイン王子でも……ヴァン王子でも……はては別の貴族か平民でも誰でも構わないんですよ」
私は自分でも悪い顔をしてる自覚がありながら、ヴァン王子に詰め寄るように話す。私の言葉を受けて、ヴァン王子は唾を飲み込んだ。
「けれど、妹を害する者は誰であれ許さない。それが例え王族であったとしても……ね……」
そう。私は妹に害なす者を成敗する悪役令嬢になると誓ったのだから。
「だから、妹を守る為にも、ヴァン王子との婚約関係は重要なんです」
「俺との婚約関係が……?」
私に気圧されたせいか、一人称が俺になってるヴァン王子だったが、私は構わず続きを話す。
「ヴァン王子は私の婚約者なのに、その婚約者はあきらかに妹に夢中になってる。そんな噂が広まれば、ますます私が妹を憎んでるという噂が信憑性を増して、私を利用してって人達が寄ってきますよね」
私はそれだけ言って言葉を止めた。その先の続きは言わなくてもヴァン王子にも理解出来た事だろう。
「……リリカルスクールに通う一年までという期間の理由はなんだ?」
設定を守る為です。とは言えないので……
「そこが落としどころかと思いまして。それに、貴族だけでなく平民も通うリリカルスクールで一年間、ヴァン王子が私でない誰かに夢中になってる姿を目撃してる人が多数いれば、噂に信憑性も増しますからね」
私は淡々とそう告げた。さて、私の言うべきことは全部言ったがヴァン王子はどう返してくるだろうか……
「……分かった。君の提案を受け入れよう」
おっ、どうやら私の提案を受け入れてくれるようだ。じゃあ、早速……
「では、この契約書にサインをお願いします!」
私はどこからともなく取り出した契約書をヴァン王子に突きつけた。その内容は、リリカルスクールに通う一年間までの間は婚約関係を続けると書かれた契約書だ。裏切る事はないと思うけど、念のため……ね。
ヴァン王子は若干呆れながらも、「分かった」と言って契約書にサインをしてくれた。
こうして、私達の契約婚約が成立したのだった
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