閑話.ステインローズ家お抱え騎士の話

「よし!では!朝稽古を始める!」


自分はステインローズ家お抱え騎士の隊長を務めている者である。今日も自分の号令で朝稽古が開始される。最近行われた魔力検査で、アリー様が高い魔力数値を示したという事で、更に騎士の増員とその質が求められ、皆、稽古とは言えかなり気合が入ってる。


「朝稽古中に失礼するわ」


我々の朝稽古の最中にいらっしゃったのはアンナ様だ。この方は、アリー様の姉君で、前回の魔力検査で残念な結果を出してしまい、現在はメイド達から疎まれると聞いたが、それでこんな場所にやって来たのだろうか?


「失礼。アンナ様。現在は稽古中ですので……」


「あぁ、邪魔にした訳ではないのよ。私はね〜……あなた達のテストに来たのよ」


……何を言ってるんだこの方は……と思ったが、なんとかうまい事言ってお帰りしていただこうとしたのだが……


「それじゃあ……テストを始めるわよ……!」


アンナ様がそう言ってニッと笑うと、瞬時にその場から消えたように自分には見えた。

すると、すぐに近くの部下が遥か後方数メートル先まで吹き飛ばされた。その吹き飛ばされた部下がいた場所には消えたと思ったアンナ様がいた。


「さぁ!誰でもいいわ!私から見事一本をとってみなさいな!」


アンナ様はそう高らかに宣言し、我々に戦いを挑んできた。


そして結果は……惨敗だった。誰一人としてアンナ様から一本をとる事が出来ず、自分を含めた全員が地に倒れ伏していた。一体、まだ8歳になったばかりの令嬢にどうしてこれ程の力が……おまけに……アンナ様は魔法を一切使っていない。

我々の中に数人は魔力持ちがいる。かく言う自分もその一人だ。だから、アンナ様が魔法を使われたかどうかは、魔力持ちの感覚で分かる。が、その感覚が反応を示さなかったので、アンナ様は魔法は一切使わず、しかも素手だけで我々を圧倒したのだ。これは一体全体どういうことなのだ……?


「やれやれ……この程度とは……本当に予想外だわ……」


アンナ様はブツブツと何かおっしゃっていたが、すぐに我々に向かって高らかに再び宣言なされた。


「よし!決めたわ!これから私が時々あなた達に稽古をつけてあげるわ!」


その宣言にギョッとした者が何人かいたが、自分を含めた数人はそのアンナ様の言葉を素直に聞き入れていた。それを見たアンナ様は……


「今、嫌そうな顔をした者達はすぐに荷物をまとめて出て行きなさい!向上心のない騎士はうちに必要ないわ!」


アンナ様は再びそう宣言された。あぁ……そうか……そこで何故アンナ様の言葉を自分が素直に聞き入れる事が出来たのか分かった。


自分は昔から騎士に憧れ、強い騎士を目指していた。本当はウィンガル王国の最強騎士団である魔法騎士団に所属したかったが、自分の魔力数値は大した値を示さなかった為、ステインローズ家のお抱え騎士として一応の騎士にはなった。

が、心のどこかでは誰よりも強い騎士になりたかった。アンナ様は我々より強い。それは先程のテストで十分に示してくださった。この方に鍛えていただけたら、自分は更に強い騎士になれる!その向上心が自分を動かしていたのだ!


「それじゃあ、稽古をするにあたって注意事項として、私がみんなの稽古に付き合ってるのは家の者には内緒にするのよ。バレてあなた達全員がクビになっても困るからね」


「イエス!!ユア!!マジェスティ!!!」


こうして、我々ステインローズ家お抱え騎士団は、アンナ様に鍛えていただけた事で、ウィンガル王国魔法騎士団にも引けをとらない強さを得た。

が、アンナ様が15歳になり「リリカルスクール」に行くまでの間に、アンナ様から一本とる事が出来た者は誰もいなかった……

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