第11話ミヅキの休日

今日は久しぶりのおやすみ…ミヅキはたまには休めとコハクと一緒におやすみをもらい街をブラブラと歩いていた。


【コハク…急にお休み貰っちゃったね~何しようかな~】


コハクもミヅキと二人っきりで嬉しそうに跳ねている。


ミヅキは市場に行って何か掘り出し物はないかとお店を回ることにした。


【あっ!コハク!あそこに屋台があるよ!】


ミヅキが小走りで屋台に近づくと…


「なんだ?子供一人か?」


何だか感じが悪い店だなぁ…


「おじちゃんこれはなーに?」


「これは今王都で流行ってる串カツだ…高いんだから触るなよ!あっちいってろ」


シッシッっと追い払われる…

どうやら子供だから金がないだろうと相手にされなかったようだ…


【何あれ…酷いね!しかも串カツって…ドラゴン亭の料理のパクリ?】


ミヅキは商品を遠くから覗いて見ると…


【うわぁ…なにあの油!淀んでる!ちゃんと越してないんだ…しかも衣がびちゃびちゃしてる…】


不味そうな串カツに背筋がゾクッとする。


怪訝な顔をして串カツ屋を見ていると、向かいに建つ屋台のお兄さんが優しそうに手招きしている。


ミヅキは首を傾げて近づくと…


「おじょうちゃんお腹すいたのか?あの店は高いからな…良かったらこれはおまけだ、食べな!」


ソーセージが串に刺さったフランクフルトを差し出してくれる。


「いいんですか?」


ミヅキがびっくりしていると…


「子供が遠慮なんてしなくていいんだ!ほら!」


グイっとフランクフルトをミヅキに渡す。


ミヅキはお礼を言うとコハクと分けながら食べた。


「まぁ…あんまり上手くないけどな…腹の足しにはなるだろ?」


うん…確かに…ちょっと…


「お兄さんこのソーセージ作る時にちゃんとお肉を粘るまで混ぜてる?」


「いや…材料が混ざれば大丈夫かと…」


いきなり小さい子にソーセージの工程を聞かれて戸惑うが…ついつい答えてしまう。


「それだけでも味が変わるよ」


「そ、そうか…やってみる!」


お兄さんは材料を取り出していつもの倍の時間粘るまで混ぜる。


ミヅキは氷を出すと…


「これも入れてみて」


混ぜてる所に氷を放り込む。


「お肉の温度をあげないようにね」


お兄さんはタネを腸に詰めていき、形を整えると鍋で茹でる。


串に刺して焼くと…


「凄い!今までのは全然違う…おじょうちゃん凄いな!」


ミヅキも一本貰うと…


うん!ホットドッグ屋のおじちゃんのソーセージには負けるけど…まぁまぁかな!


「後は…お兄さん油はあるの?」


「いや…油は作り方がよく分からなくてな…」


恥ずかしそうに頭を下げる。


ミヅキはコソコソと作り方を教えると…


「大事な事は綺麗な油を取る事だよ!そこを怠るだけで全然違うからね!今少し持ってるからあげるね」


ミヅキは油を取り出すと屋台の火にかけて温度をあげる。


「お、おい!おじょうちゃんそんなもん貰えないよ!」


「ソーセージのお礼だよ、それにあの屋台に負けたくないしね!」


串カツもどきの店に客が多い事がミヅキのやる気に火を付ける!


「お兄さん小麦粉とさとうと牛乳買ってきて!」


「お、おう!わかった!」


お兄さんは言われるがままお店に走っていった…急いで戻ってくると…


「おい!さっきから人の店の前でごちゃごちゃと何やってるんだ!商売の邪魔だ!子供と遊ぶなら他所でやれ!」


串カツ屋のおじさんが怒鳴り込んでくる。


「遊んでなんかないよ!料理を作ってるんだから!」


ミヅキが負けじと言い返すと


「なんだこの生意気なガキは!おい!負け犬野郎お前のガキか!」


負け犬?


ソーセージ屋のお兄さんがビクビクして…


「い、いや…知らない子だが…料理を教わっているんだ…」


弱々しく答えると


「子供に教わるなんて!やっぱりお前はどうしようもないな!」


あははは!と豪快に笑っている。

ミヅキは頭にきて言い返そうとすると…お兄さんがいいんだとミヅキを自分の後ろに隠した。


「悪かったな、もう少し静かにやるから…」


おじさんはペコペコと謝ると、串カツ屋のおじさんは満足そうに笑いながら自分の屋台へと戻って行った…


「お兄さん!なんで言い返さないの!」


ミヅキは思わずお兄さんを責めてしまう。


「いいんだよ…あいつが言ってる事も間違って無いしな…」


「それに何!負け犬ってなんて失礼な人なの!」


「いや…それは…ほら!それよりなんか作るんだろ?」


話を変えられる。


すると、可愛らしい女の人がお兄さんの店に顔を出した。


「マック?どうしたの?お店開いてないけど?」


「ロッテ!どうしたんだ?こっちに来たらまずいだろ!」


お兄さんが慌て出す。


「お姉さんはだぁれ?」


ミヅキがお兄さんとお姉さんの顔を見ると…


「この人は…あの串カツ屋のモスさんの婚約者だよ…」


お兄さんは寂しそうに笑いながら答える…


「それは……そうだけど…」


お姉さんが悲しそうにしている…


「ここにいたらモスさんに悪いよ……こんな事子供に聞かせる事なんて無いよ…さぁモスさんの所に行きな」


お兄さんはそう言うとくるっと後ろを向いて屋台の準備を始めてしまった…。


ミヅキは悲しそうにお兄さんを見つめるお姉さんを送ってくるねと一緒に歩き出す、串カツ屋には行かずに路地に入ると…詳しく話を聞いた…。



「お姉さんもはマックさんと幼なじみなんだ!」


「えぇ…そうなのモスさんも近所に住んでて昔っからの知り合いなんだけど…いつも横柄な態度でね!私もマックも小さい頃からよくいじめられてたわ!」


思い出しているのかプンプンと怒っている。


「だけど…あの屋台が当たったみたいで急に羽振りが良くなって…この前に親を通して結婚を申し込まれたの…」


お姉さんが心底嫌そうな顔をする。


「結婚したら今ある借金も全部払ってくれるって言われて…お父さんが了承してしまって…」


「そんなの断っちゃえばいいじゃん!」


ミヅキがそうしろと言うと、お姉さんは悲しそうに笑って首を振る。


「お父さんもお母さんもやっぱりしなくていいって言ってくれたんだけど…二人が夜中に泣きながら喧嘩してるのを見ちゃってね…私が結婚すればみんなが幸せになれるから…いいのよ…」


「そんなぁ…」


「いやね…こんな小さいのにこんな話を…ごめんね」


お姉さんはミヅキの頭を優しく撫でると串カツ屋には寄らずに帰って行った…。

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