第10話セバス

「はぁー」


ミヅキが王都にたってから何度目かもわからないため息をつく…。


「ギルマス!うるさいですよ!手が止まってます」


セバスからの叱責にディムロスはジト目を向ける


「お前だって内心はため息をつきまくってる癖に!」


「…あなたとは違います…」


(当たり前じゃないですか…はぁ…ミヅキが居ない日々がこんなにも色褪せるものだとは…)


セバスはギルマスに気づかれないように肩を下げる…


コンコンコン!


扉をノックする音に返事をするとフレイシアが失礼しますと顔を出した。


「お忙しい所すみません…」


すまなそうに声をかけると


「どうしましたか?」


セバスが対応する。


「先程、王都に行っていた冒険者が帰って来ました…話を聞きますか?」


王都からの言葉にディムロスが反応する!


「連れてきてくれ!」


セバスはフレイシアを見るとニッコリと微笑んだ。


冒険者達をギルマスの部屋に連れてくると


「まずは任務御苦労だったな」


ギルマスからの言葉に恐縮して頭を下げる


「いえこの度はコジローさんの任務に同行させて頂き感謝しています」


「君たちの兄や姉の事はこちらも大変悲しい出来事だった…もっと早くに事態がわかっていれば…すまなかったな…」


ディムロスが頭を下げるとセバスも一緒に頭を下げる。


「いえ!そんな!頭を上げてください!悪いのはあの男だってわかっています」


「王都のギルマスから報告はきているが…君たちはあの処分でいいんだな?」


「はい。ギルドの決定に従います!それに…」


「それに?」


ギルマスが先を促すと


「あの男の変わり果てた姿を見て…なんか吹っ切れました!これからは姉の分まで頑張って行こうと思います」


「俺もです」


二人ともスッキリとした顔をしていた。


「何かあれば何時でもギルドに報告に来てくださいね」


セバスさんが優しく声をかけた。


「「はい!」」


ありがとうございました!と席を立とうとする二人をディムロスが引き止める。


「ちょっと待て!」


二人はまた席に座ると…


「所で…今王都はどんな感じだ?なんか流行ってる物とか?ほら、ちょっと情報を仕入れたいからな…少し話を聞きたいんだ」


二人は顔を見合わせると…


「王都ですか?俺達も初めて行ったから…」


「なんかコロッケとかプリンて言う食べ物が凄い流行ってましたよ!私も食べましたがすっごい美味しかったです!」


「あっ!俺も食べました!その店にいる子が貴族に攫わて大変だったって!それであの男も絡んでて捕まえることが出来たみたいですが」


「攫われる!?」


「どんな子ですか?」


ディムロスとセバスが前のめりになると…


「え、えっと…赤毛の獣人だったかな?」


「いや、黒髪の可愛い子だって聞いたよ!」


(ミヅキだ!)


「赤毛?じゃ違うのか?」


ミヅキの変装を見ていないディムロスはホッとするが、セバスの顔を見て固まる…。


「セ、セバスさん?な、何か俺達、悪いこと…言いましたでしょうか?」


冒険者達がセバスの表情に怯えて震えていると、


「あっ!すみません…なんでもありませんよ、ちょっと思い出しただけですから…」


(怒りを…)


「それで?その子は無事なんですよね?」


いつもの様子に戻ったセバスにほっとしながらも言葉を選んで話し出す。


「はい…。無事だと聞いております。確か…コジローさんの知り合いだとか…」


もう一人の相手を見るとコクコクと頷く。


「そうですか…それは良かった…怪我などしていないようですね」


「あっ怪我はしてた見たいです」


「馬鹿!」


あっ!二人は恐る恐るセバスさんを見ると…


ガクッ…意識を失ってしまった…。


「セバス!威圧を止めろ!こいつら気を失っちまっただろ!」


「ミヅキが怪我…いったい誰が!どの程度…」


セバスははぁーと息を吐くと威圧を止めて


「ギルマス…二週間ほど休みを下さい」


「巫山戯んな!お前だけ行こうなんてずるいぞ!」


「何言ってるんですか!私は副ギルになってから休みと言う休みを貰ったことがないんですよ!」


うっ…それを言われると…


ディムロスは口を噤む。


「たった二週間です!あなた一人でもどうとでもなるでしょう!」


「戦力なら大丈夫だが…この書類が…」


そこにはまだ目を通していない書類が山のように積まれていた。


「わかりました!この書類をどうにかすればいいんですね!」


「お、おいセバス?」


「その代わりこれが終わったら!休みを貰いますからね!」


そう言うとセバスは三日三晩寝ないで書類に向き合っていた…その間誰もギルマスの部屋には近づく事はなかった…。

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