第5話ミヅキの気になる子


「ベイカーさん…お話があります…。」


とミヅキが神妙な顔でベイカーの前に佇む。


「ど、どうした?なんかあったのか?」


いつもと違うミヅキの雰囲気にベイカーはのまれていた。


「ベイカーさん、私…気になる子が出来たの…」


とミヅキが頬を赤く染め恥ずかしそうに目をそらす。


ベイカーはビクッと体を固くした。


「…で、どこのどいつだ?」


とベイカーはなるべく穏やかに聞く。


「ベイカーさんも知ってる子だよ。」


とミヅキが嬉しそうに話す。

どこのどいつだ!まさかあいつじゃないだろうな!

ベイカーは金髪馬鹿の顔が浮ぶ。


「一度、ここに連れてきなさい。」


と妙な敬語で話す。


「えっ!いいの?じゃ明日連れて来ていい?」


とミヅキが楽しそうにしている。


ミシッ!

ベイカーが座っている椅子が音を立てる…。


「ああ、」


とかろうじて返事をする。

明日は早いからおやすみなさい!


とミヅキは、自分の部屋に行ってしまった。


バキッ!

ベイカーが座る椅子の肘当てが砕けた。


ベイカーはギルドへと向かった…


バン!


とギルマスの部屋をノックも無しに飛び込む。


「ギルマス!セバス!ミヅキが…。」


とベイカーがギルマス達に泣きつくと、ミヅキに好きな奴が出来たと報告する。


「それで?どこの方ですか?」


とセバスが笑顔も忘れて聞いてくる。


「それが教えてくれないんだ!連れてこいって言ったら、明日連れてくると…」


とベイカーは酒をグイッと飲んで答える。

何杯飲んでもちっとも酔えない。


「コジローに調べさせるか?」


とギルマスが言うと、ふたりが頷いた。

至急、コジローを呼び出すと、コジローが膝をつく。


「お、おい、大丈夫か?」


ベイカーが声をかけると


「あっ…すみません、覚悟はしてましたが、思いのほかショックが大きくて」


と椅子に向かって話しかけている。


「おい!コジロー俺はこっちだ!大丈夫かコイツ?」


とセバスをみると


「コジローさん。ミヅキさんの相手を調べて下さい。あなたも気になりますよね?」


とコジローを立たせる。


「ミヅキのあいて…。ミヅキの相手!ああ!分かりました。」


コジローの顔がしゃんとする。


「よろしい、ミヅキさんが選んだ相手です、素晴らしい人ならいいんです。しかし、ミヅキさんが騙されているかも知れません。なんせミヅキさんは人を疑う事を知りませんから。もし!あの馬鹿王子なんて事にでもなったら…国を出ないと行けませんしね。」


と笑うと、


「明日その方を連れてくるそうです。それまでに情報をお願いしますね」


とコジローの肩を叩く。はい!とコジローが音も立てずに出ていった。


朝になり、コジローが戻ってくるが浮かない顔をしている。


まさかとみんな青い顔をするが、コジローが首を横に振る。


「すみません、ミヅキが誰かと一緒にいたという情報は一切ありませんでした。ほぼ、ベイカーさんか、セバスさん、俺の誰かが側にいたようです。」


「私達の隙をついて会ったと言うことですか?」


「そんな奴いるか?」


とベイカーも考える。しかしもうミヅキが起きる時間だ。

ベイカーは一度家に帰ることにした。


セバスとコジローも落ち着かずついて行くことにした。


「おはよぉーございます。」


とミヅキが眠そうに起きてくる。


「「「おはよう。」」ございます。」


と三人が挨拶を返すと、ミヅキがびっくりしている。


「セバスさん?コジローさん?何してるんですか?」


とミヅキが聞くと


「いえ…ちょっとベイカーさんに用事がありまして…」


とセバスが言うと、


「えっ?今日ベイカーさんもセバスさんも忙しいですか?」


とミヅキが困ったように聞く。


「どうしたのですか?」


とセバスが聞くと

みんなに会わせたい子がいると言う。

来たか…。


着替えたら、連れてくると言う…。

三人は覚悟を決めて家で大人しく待っていた。


「ただいま~」


とミヅキが帰ってくると手に小さな動物を抱いている。


「この子がね、お家無いみたいなの!だからお家作るまで家に置いて上げていい?」


とミヅキが三人をのぞき込む。


「…会わせたい子ってこいつか?」


とベイカーがミヅキが抱っこしている、リスみたいな動物を指す。

この前道でミヅキが、撫でていた奴だった。

うん!とミヅキが頷く。


「「ベイカーさん!」」


セバスとコジローがベイカーを睨む。


「いや!だって!ミヅキがあんな言い方するから!」


と二人に待て待てと手で静止させる。


「ミヅキさん、ちょっとベイカーさんお借りしますね!」


とセバスが笑ってベイカーを連れていく。


「ミヅキまたな。」


とコジローもそれに続く。


「う、うん?またね?」


ミヅキは訳が分からず返事をした。


その後、ベイカーさんが帰ってきたのは夜遅くになってからだった。

帰るなり倒れ込み、そのまま気絶するように寝てしまった…。


【どうしたんだろ?】


とミヅキがシルバに聞くと


【さぁな】


とシルバが笑う。


【今日が何の日か知ってれば騙されなかったのにな。】


とシルバがボソッと言った。

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