色々やらかす転生幼女は溺愛されすぎてほっとけない番外編

三園 七詩【ほっといて下さい】書籍化 5

第4話満月の夜

満月の夜の事、ミヅキはずっと触れていた温もりが離れて寒さを感じて目を覚ました。


「うーん」


目を擦りながら周りを見るとシルバがいない。


【あれ?シルバ?】


部屋を見るが何処にもいない。

シンクが起きてしまい。


【ミヅキ…どうしたのー?】


とミヅキの肩に乗って頬に擦り寄る。


【シンク!シルバがいないの】


とミヅキが言うと


【あー、今日は満月だから】


と言われてしまった。


【満月だとなんでシルバがいなくなるの?】

【獣系の魔獣達は満月の夜が一番魔力が高くなるんだ。だから疼いちゃうんじゃないかな?】


とシンクが教えてくれる。


【へー!そうなんだ!】


ミヅキはシルバが気になり、そおっと家を出てシルバの後をおった。


【シルバ!】


シルバがちょうど塀を乗り越えようとしている所で声をかけた。


【ミヅキ?どうしてこんな所に?】


シルバがミヅキの側に駆け寄る。


【シルバの温もりが無くなったから起きちゃった。私も一緒に行っていい?】


とシルバに聞くと


【寝てた方がいいんじゃないか?】


と心配する。


【なんか目が覚めちゃったし、シルバの事が気になって眠れないよ。】


と笑うと、乗れとばかりに屈んでくれる。

ありがとうと抱きついてそのままシルバに乗ると

フワッと塀を乗り越える。


そのまま森を越えて、小高い崖の上に来ると


【結界を張るからここにいるんだぞ、シンク、ミヅキをちゃんと見てろよ】


とふたりを下ろす。


【シルバはどうするの?】

【俺はちょっと駆けてくる。少し動かないと寝れなくてな。】


シルバはミヅキの頬をペロッと舐めると、いい子にしてろと崖から飛び降りて行った。

シルバを見ていたがあっという間に遠くに行ってしまったようだ。

凄い勢いで木が揺れていた…。


【本当に月が綺麗な満月だね!】


とシンクに言うと


【うん…】


と少し眠そうだ。


【シンクおいで】


とシンクを膝の上に置いて優しく撫でる。


【シルバが結界張ってくれたから大丈夫だよ。シンクは寝てな。】


と撫で続けていると


【で…も…ミヅ…キ…見て…な…】


シンクが気持ちよさそうに寝てしまった。

ミヅキはふふっと笑いおやすみと小さく呟いた。


シンクを膝にだき月を見ていると後ろの方で、小さい音がした。


シンクを起こさないようにそおっと見ると、何かが動いた。

シンクをそおっと下ろして、ゆっくり立ち上がり音がした方に足音を立てないように近づくと、そこには茶色い体の柴犬がいた!


(えっ!これって犬だよね?しかも柴犬!)


柴犬はクンクン地面の匂いを嗅ぎながら近づいて来た。

そしてピクっと顔を上げてミヅキを見つめた。


(かぁわぁいいー!)


ミヅキは、目線を下げておいでーと手を広げて手招きする。


柴犬は少し躊躇しているような感じでウロウロ迷っている。


「おいで~」


ともう一度優しく言うと、耳をピンと立てて尻尾を振りながら近づいてきた。


「いいこだねぇー」


と言いながら頭を撫でて顔を見ると、右目の所に傷があった。

もう古い傷のようで痕になっているようだった。


「あれ?きずがあるね…もういたくないのかな?」


と言いながら優しく傷を撫でると気持ちよさそうに目を閉じる。


「ふふ、コジローさんとおなじきずだね。」


と撫でると、柴犬がピクっと耳を立てた。

周りを警戒しだしてミヅキの頬をペロッと舐めるとくるっと向きを変えて駆け出してしまった。


「いっちゃった…」


もっと撫でたかったなぁと寂しく手を見ていると、ぶわぁっと頭の上を何かが通ったと思うとシルバが目の前にいた。


【シルバ!びっくりしたー!】


寂しくなっていた手でシルバを撫でる。


【何も無かったか?】


とシルバがミヅキの髪の毛の匂いを嗅いで、頬をペロッと舐めようとすると、ピクっと止まって頬の匂いを嗅ぐ。


【誰かきたのか?】


とシルバが聞くので


【犬がいたの!茶色い柴犬!知ってる?】


とミヅキが、聞くと


【しばいぬ?犬はわかるが…この臭いは…】


とシルバが、考え込む。


【なんかふわふわで可愛かった!人に慣れてる感じだったから飼われてるのかな?】


と、ミヅキはシルバの様子に気付かず話している。


【結界に反応しないって事は敵意がない奴だったんだろう、シンクも反応しなかったんだろ?】


とシルバが聞くと


【あっ!シンク!】


とシンクを寝かせたままにしていた事を思い出し駆け寄る。

シンクは全然気付かずにスヤスヤ寝ていた。

ミヅキがシンクを抱きかかえると、シルバが側に寄ってきた。

さんにんで固まって座り月を見る。


【綺麗だね…】


ミヅキがシルバに寄りかかる。


【そうだな】


とシルバが尻尾でミヅキを包み込んだ。

ミヅキはふわふわに抱きしめられてウトウトしてくる。


【ミヅキ眠いのか?】


とシルバが聞くと


【うん…少し…】


と目がもう閉じようとしている。

シルバが優しくミヅキを鼻先に乗せ背中に乗せると、ミヅキは夢の中に落ちていった。


シルバとシンクと柴犬を草原の中で撫で回す。

ミヅキは心地よい揺れを感じながら幸せな夢をずっと見ていた。

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