学園へのプロローグ1

今は昔、世界には今やおとぎ話や都市伝説として語られるような生物が存在していた。

巨大な爪や牙を持つ物、空を飛び回る物、炎や水を操る物などなど。

そんな魑魅魍魎とした世界では種族間での均衡は保たれていたという。

突如世界が歪むまで……。

今から数千年ほど前、種族の存亡をかけた戦争が始まった。今現在でも開戦の原因は不明とされている。

もちろん今の世界で人間と呼ばれる種族もその戦争の中にいた。

しかしながら人という種族にはなんの力もなく、戦火の中を逃げ惑い身を隠すしかなかった。後に住む場所を奪われた人々は地に穴を開け地面の下に新たな住処を築いていった。

土を掘り、壁を固め、巨大な地下洞窟を作りあげた。

戦争の終わらぬまま月日は流れ、地上は焦土と化し、空は黒く濁り、海は戦前の半分以下に枯れ果てていた。そんな中人類は新たな居住とした地下洞窟に水を引き、植物から食べ物を作りどうにか生きながらえていた。

はじめは人を餌にする種族に追われたりもしていたが、今ではそのほとんどが地上の戦争により死滅していた。

人を餌としない種族にいたっては、何の力もなくただ土の下に逃げた脅威にならないモノには目を向けなかった。

人が土の下で少なからず平穏な日々を送っていたある日、世界は再び歪みを見せる。

大きな地響きと共に、人々の暮らす地下洞窟の天井に大きな穴がが開いた。他種族の攻撃かと身構えた人類はその大きな穴からとあるモノを目撃した。

空から降り注ぐ無数の光り輝く石

後に人類の希望となる星々を─────


⬛︎


「……んね……りんねー。おーい鈴音ー」

微睡みの向こうから私を呼ぶ声が聞こえる…。

「んっ…ふぁ〜……侍音しおん君……?」

「はーい侍音君ですよー」

目が覚めると学校の教室だった。

窓際の後ろの席、目の前の男の子と私以外に人はおらず、窓の外は夕日で赤く染まっていた。

「えっと…おはよう?」

私は少し恥ずかしさを感じながら、目の前の男の子 神夜かみや侍音しおん君に声をかけた。

「はいおはよう。そろそろ真音まいんたちも戻ってくるぞ」

そう言って侍音君は私の手元に目を向けた。

「今度はどんな話を書いてるんだ?」

私の手元には1冊のノートと1本のシャープペン。ノートには書き途中の文章が並んでいた。

「わわっ!まだ見ちゃダメー!!」

私は急いでノートをバックにしまった。

「ちゃんと完成したら読ませてあげるから、覗き見はだめなんだよっ」

「はいはい恥ずかしいんだろ?分かってますよ鈴音先生。まぁそれはそれとして」

侍音君の右手が私の頬に伸びてくる。

「えっ?しおん…くん……」

ゆっくりと触れる右手。頬をさするように親指が動く。

何が起こっているのか分からず、私は固まってしまった。

「あ、あの……しおんくっ」

「ほっぺに書いてた文字写ってるぞ。随分ゆっくり寝てたな」

そう言いながら侍音君は優しく頬をなぞり始めた。

「まぁ待たせてるのは俺達だし、ゆっくり寝ていて貰っても構わないんだが。あんまり無防備な行動してると何されるか分からないから気をつけろよっと。よし落ちた」

「なっ……なっ……!」

顔が熱くなっていく。真っ赤になっているのが自分でも分かる。

「ん?どうした鈴音?」

「侍音君のエッチーー!!」

「なんで!?」

教室に響く破裂音。人の少くなった校舎にゆっくりと音が広がっていく。


ここは如月学園きさらぎがくえん

誰もが当たり前の日々をおくる、なんの変哲もない普通の学園

そんな学園の中で、世界を動かす事件が起きることを今は誰も知る余地はなかった――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る