過去
私は昔から、男を選ぶのが下手だ。
惹かれるのはいつも私を愛してくれない人ばかり。そう言えば、私に傷をつけたあの人も、友達に「やめた方がいい」って言われたっけ。
あの人は、寂しい人だった。
いつもヘラヘラとした笑顔を浮かべていて、寄ってきた女の子を拒まない。そんな女たらし。それでも、その瞳には孤独が隠れ見えて、私はあの人をほっておけなかった。だから、どれだけ傷つけられても、あの人を嫌いになりきれないんだと思う。
そんなあの人が私を抱くのは決まって、嫌なことがあった時だった。
ストレスをぶつけるように、私を激しく、乱雑に抱いた。そして終わった後、優しい表情を浮かべて「ありがとう」と笑う。
こんな報われない関係、さっさとやめた方がいいと頭では分かっていたけれど、彼の笑顔が嬉しくて、私はあの人との関係を断ち切れなかった。
「他の子にも、こんな激しくするの?」
ある日、私はそうあの人に尋ねた。彼はそれに対し、首を横に振り、なんでもないことのように言ってのけた。
「ううん。お前だけだよ。他の子はもっと優しく抱く」
「そっか」
私は傷ついた自分の心に蓋をした。ベッドの中にいる間だけは、愛されていないことを感じたくなかったから。
「逃げたきゃ、逃げてもいいよ?」
あの人がそう寂しそうに笑う。
私は首を横に振って、体を彼に預けた。
「私だけが君の孤独を知っている。それだけで、いいの」
「ふふ、独占欲ってやつ?」
「そうかもね」
そうあの人と笑い合ったけれど、本当はそれだけじゃ嫌だった。
優しく抱いてもらえる他の子たちが羨ましかったし、あの人が本当に愛した人をどれだけ優しく抱けるのか、知りたかった。
しかし、そんな話をしたら、きっとあの人は私から離れてしまうだろう。
だから私はあの人の孤独を埋めるための道具として側にいることを選んだ。
――あの人のことを愛していたから。
それなのに、傷ついてまで側にいる努力をしたのに、私はあの人に必要とされなくなってしまった。
あの人が私に別れを告げた本当の理由は分からないけれど、彼の最後に言った優しい言葉は今でも覚えている。
「お前は、俺と一緒にいるべきじゃない。もう、終わりにしよう」
それに対して、私は「分かった」と笑って伝えた。
本当は泣きたかったけれど、泣くのは卑怯だと思ったから頑張って堪える。あの人も、重い女は好きじゃないだろう。
そうやって笑えば笑うほど苦しくなって、彼のためにした優しさがブーメランのように自分の胸に刺さった。
結局、あの人が部屋を出て行ってから、私は一人で泣いたのだった。
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