ベッドの中で

 彼が私を愛していないことは、薄々気付いていた。


 彼が最初に言った通り、彼の好きと私の好きはやっぱり異なっている。彼と共に過ごすうちに、そう感じざるを得なくなった。


「おやすみ」


 耳元で、いつも通りの君の低い声が聞こえる。その声は彼が側にいることを実感させてくれて、私を安心させた。


 ――私を愛していないくせに、ずるい。


 そう思いながらも、彼を拒めるほど強くなくて、私は小さく返事をした。


 そんな私に気付いているのか、彼は優しく私を抱き寄せる。決して愛の言葉を口にはしない。ただ、私を抱きしめるだけ。


 きっと、彼は一人で何かを抱えているのだと思う。しかし、彼がそれを私に見せることはないし、今まで本音の話を聞いたこともない。


 それがどこか寂しくも思うけれど、私自身、彼に言えていないことがあるため、深く尋ねる勇気が出なかった。お互い様か、と私は自傷気味に笑う。


 しかし、心のどこかで、私は彼に期待していたのかもしれない。

 彼なら、私の閉じた心を開けてくれる。私の傷を癒してくれる。そう、勝手に心の奥で思っていたのかもしれない。


 だからこそ、一歩踏み込んでくれない彼に、寂しさを感じた。


 ――私だって彼を助けてあげられていないのに、無理な話か。


 私は自分の無力さに嫌気を感じ、それを紛らわすように彼を抱きしめ返した。

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