13-5 魔術の属性
その地に最も強く影響を与える妖精の属性が都の地形・気候を決めるように、妖精を利用する魔術もまた、発動する場所と、術者の血に宿る彼の出生地の属性に強く影響を受けるものだ。
発動場所、術者自身の属性。どちらかに一致する属性の魔術であれば、他属性の術よりも速く、負担なく扱うことができた。
今のライナルトで見れば、
一方で、どちらにも当てはまらない属性の魔術となると、術の情報量はどうしても多くなる。当然、ルーン列もそれだけ長くなるはずなのだ。
ルーヴェンスの術の効果――ライナルトの魔術と、まったく対になるものだった――からして、ライナルトの出方を確かめてから詠唱をはじめたことには疑いようがない。
にもかかわらず、両者の術は、ああしてぶつかり合った。極限まで情報量を減らしたライナルトの魔術と彼の魔術が、ほとんど同時に放たれたとでも言わんばかりに。
先ほどの衝突後の様子からして、ルーヴェンスが放ったのは、水属性か氷属性の魔術だろう。
灰色の髪と瞳からでは、術者としての属性を読み取ることはできないが――ルーヴェンス自身が偶然にも水または氷の属性を持っていたというなら、あの対応速度にも納得がいく。
これを確かめようと、ライナルトは、短いルーン列を、今度は連続して唱えた。光属性と火属性の魔術を織り交ぜ、断続的に放つ。
結果は、先ほどと同じだった。単純な防護魔術ではなく、対となる攻撃魔術によって打ち消されてしまうのだ。
偶然ではなかった――ライナルトは、ごくりと唾をのんだ。自然と、攻撃の手が止まる。
予感と、焦り。それに……畏怖、だろうか。
魔術師として、継承者として。ライナルトは、〈とんでもない敵を相手にしてしまった〉という確信じみたものを、目の前の男に感じはじめていた。
発動速度のみを追及し、磨き上げてきたライナルトの魔術。
その中でも、極限まで無駄を削り落とした、最弱にして最速の魔術より、
恐れるべきは、それがこの男の力のすべてではないだろうことだ。
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