13-3 二つに一つ

「――ということだ。そちらが勝てば、支部長に会うことを認める。大魔術の〈鍵〉については、直接交渉してもらうことになるが。こちらが勝てば……あるいは、受ける自信がないのなら、今すぐに火の都フラメリア支部から出て行ってもらう」


 これが良案とは言えないことは、提案したライナルト自身にも分かっていた。



 まだ相手の力量は読めない。一対一という状況がどう働くかもわからなかった。

 しかし、とにかく今は、人質の安全を確保することが最優先だ。人質さえ解放されれば、いくらでも手の打ちようはある。

 

 

 万が一、ライナルトが決闘に敗北したとしても、ライナルトの背後にはジェラールがいる。

 ジェラールが男の要求に応じるはずがない。魔術師として、ライナルトよりはるかに優れた弟分なら、問題なく事態を解決できるはずだ。

 ジェラールに手間をかけさせずに済めば、それが一番なのだが。



 対するルーヴェンスは、わずかに逡巡する様子を見せてから、厳しい面持ちで応じる。


「都合の良すぎる要求だ。決闘とやらは受けてもいい。人質については、決闘後の君たちの対応次第だがね」


 この返事に、ライナルトは思わず苦笑した。

 〈信用できない〉と言いたいのだろうが、それにしても、ずいぶんな自信ではないか? こちらが決闘に勝利したなら、その後の対応を問われることもないだろうに。



 自信のほどはさておき、決闘を受け入れたということは、ウィリアムの述べたルールにも納得したということだ。

 不正を行わない――決闘の最中に限るとしても、人質に手を出さない約束を取りつけられただけで、この場における対応としては及第点と言っていい。

 あとは……。


「双方、よろしいですか?」


「ああ。始めてくれ」


 審判であるウィリアムの問いに、ライナルトは、ルーヴェンスが頷いたのを確かめてから答える。



 ウィリアムは、震える手を宙に差し伸べ、向かい立つ二人の間を隔てた。そして、彼らの顔を二、三度うかがってから――。


「――では、はじめっ!」

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