13-2 お役目

 火の都フラメリア支部において決闘をするとなれば、指導員長の許可を得ること・指導員を同席させることが義務づけられているが、実際のところ、指導員長であるライナルトのもとに決闘の申請が上がってくることはまずない。


 決闘を望む理由の多くが、しようのないことであるためか。あるいは、指導員がうまく仲裁に入っているためか。

 ともかく、口上を覚えていたからといって、こと火の都フラメリア支部属の魔術師には、これを使う機会がほとんどないのだった。



 そうでなくても、魔術師連合の規則で定められた決闘のルールや口上は、他の連合規則と共に、見習いのうちに教わるものだ。

 教わってから時間が経っていないだけ、見習いの方がよく覚えていて当然と言える。



 もちろん、すべての見習いが覚えているわけではないだろうが――。


「どうだ、ウィリアム?」


「は、はい! 僕、やれます。光栄です!」


 ライナルトの思った通り、生真面目なウィリアムは、口上をきちんと暗記していたようだ。



 ライナルトが含みのある視線を送ると、ルーヴェンスはウィリアムの拘束を解く。

 立ち上がったウィリアムは、ライナルトに促され、彼とルーヴェンス、両者の間に立った。固く握った小さな拳は、緊張にか震えている。


「甲に、ライナルト。乙に、ルーヴェンス・ロード。両者の決闘は、全都魔術師連合の規則に則って行われます。

一に、決闘を行う際は、必ず両者ともにその旨を了承すること。

一に、相手の命を奪わないこと。致命的と思われる攻撃を行う場合については、直前で術を解除するだけの余力を残すこと。一方が死亡した場合、この決闘は無効となる。

一に、魔術杖他、補助的な道具を除く、武器及び道具の使用は許可しない。

一に、不正を行った者は、その場で敗北とする。

両者がこの規則に従わない場合、この決闘は無効となります」

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