11-6 衝突
「ロディ、てめえ! 俺がここを見つけたってのに、俺抜きで勝手しやがって!」
興奮したワルターは、ロデリオに馬乗りになり、何度もその顔を殴りつける。
ロデリオが女を好きに扱うのをおもしろがって見ていたもう一人の悪友、マーティンは、ワルターの剣幕に怯えて立ちつくすばかりだ。
ずる賢いロデリオと、臆病なマーティン。ワルターがここの存在を明かしたのは、この二人だけだ。
ワルターが隠し扉を見つけ、手先が器用なマーティンが鍵を作り、耳の早いロデリオが支部中の情報を集め、仕事から抜け出すタイミングをうかがう。
三人の連携は悪くなかったが、お互い――特に、ワルターとロデリオ――が先んじようとするあまり、こうして、ワルターと衝突することも珍しくなかった。
いよいよ、マーティンが泣きべそをかきながらワルターを止めに入った頃には、ワルターの怒りもすっかり落ち着いていた。
ワルターが体の上から退くと、ロデリオは鼻血を拭い、血の混じった唾とともに悪態を吐く。
「くそっ。すぐ横を通ったときには、気づきもしなかったくせに。しかも、俺たち以外をここに連れてくるなんて、どういう……」
〈俺たち以外〉――ワルターに連れられてやってきた男は、衝撃的な出来事を前にしても、口を挟むこともなく、静かに眺めているだけだった。
怒りを発散させたワルターは、男の様子を見て、にんまりと笑う。
「あんた、結構図太いんだな。びびって逃げちまうかと思ったよ。……ああ、この二人はロデリオとマーティン。使える奴らだ。むかつくこともあるけどな。ロディ、マッド。こちら、特別なお客様だ」
ワルターが、ぼんやりとした調子で双方を紹介する。ロデリオを殴ったことで気が高まり、頭がぼうっとしているのだった。
ワルターは、浮かれて心地良い感覚の中、倒れ込んだ女の方に歩み寄る。
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