4-3 絶たれたパス

 『おつとめ』に欠かせない宝玉の不調が長く続けば、いずれタンクの魔力も空になる。そうなれば、支部の運営にも大きな影響を及ぼしかねない。



 ジェラールは宝玉に触れたまま、目を閉じて意識を集中させる。

 宝玉からタンクに繋がる経路をたどれば、宝玉の不調の原因も明らかになる――はずだった。


「変だな。パスが切れてる。いや、途中で切れてるわけじゃない? これは……」


 ジェラールのつぶやきに、ライナルトが渋い顔をする。


「やはり、そうか。実を言うと、ルカも同じ見解だった。宝玉とタンクとの繋がりが絶たれている、とな」


 ジェラールは、ライナルトに寄りそうルカの方を見やる。ジェラールと目が合うのにも、ルカは無反応だった。



 多くの魔術師と同じく孤児である、ルカのラストネーム――追跡者トレーサーは、彼の姓ではない。

 魔力の痕跡や、魔術的に結びつけられた物同士の繋がりを辿ることを得意としていた彼に、ライナルトが与えた称号だ。


 それほどまでにこの道に長けているルカが、〈繋がりが絶たれている〉と判断したのなら、間違いないだろう。



 何らかの原因で、宝玉からタンクへ至る経路そのものが消滅し、『おつとめ』により注ぎ込まれた魔力がタンクに送られない状態になっていたらしい。


「となると、ヒビが入ったのは、注ぎ込まれた魔力が宝玉そのものに蓄積されたのが原因か……」


 ジェラールは、眉間を揉みながらつぶやく。



 宝玉自体は、タンクへ魔力を送るための媒体でしかない。当然、大量の魔力を受け入れられるだけの容量はない。

 にもかかわらず、タンクとの繋がりが絶たれたために宝玉に魔力が蓄積され、宝玉本来の容量を超え――ヒビが入った、ということらしい。


 何にせよ、宝玉はすでに使い物にならないだろう。



 幸い、タンクから支部内設備への魔力供給は、タンクへ魔力を蓄積するのとは別のルートで行われている。

 とはいえ、新しい水晶玉を用意し、タンクに再接続するまで、蓄積された魔力が持つだろうか。

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