3-12 罰

 戻ってきたルカが、二人分の食事をジェラールたちの向かい側の席に並べる。

 ライナルトは彼に向けて頷いてみせてから、思い出したようにワルターに視線を戻した。


「ああ、そうだ。お前の処罰についてだが……。ことの顛末は後で聞かせてもらうとして、この前の飴泥棒の件についても、まだ罰を与えていなかったはずだな。それも含め、明日から三日間、受付係を任せようかと思っている」


 受付係といえば、魔術で動く木偶の仕事だ。火の都フラメリア支部はそれほど人の出入りがなく、受付係に人を割くのも合理的でないためだ。

 もし、木偶の代わりにこの仕事を負わされる者がいたとすれば、ひどく退屈な思いをすることになるだろう。


 不意を打たれたように目をしばたたいていたワルターは、ライナルトの言ったことをようやく理解すると、悲痛な声を上げた。


「受付係!? そんなの、一人前の魔術師がやる仕事じゃないじゃないですか!」


「そうだな。だからこそ、だ。お前には、一人前の魔術師として認められた理由についてよく考え、普段の行動を省みる時間が必要だろう。この期間、杖も没収とする。よく頭を冷やせ」


 魔術杖の没収は、火の都フラメリア支部の罰則において、追放や懲罰房行き等に次ぐ厳罰だ。


 特に、魔術杖がなければ魔術を扱えない者たちに対しては、〈魔術の使用禁止〉として、絶大な効力を発揮する。

 ワルターもまた、この対象だった。



 魔術を使う能力を制限されたところで、魔術師でなくなるわけではない。だが、感情的には同じことだ。

 魔術師の集団の中で、一人、魔術師でなくなること――そのみじめさは、体験した者にしかわからない。だが、決して軽い罰とは言えないことだろう。


 ワルターは、プライドも忘れて、「それだけは……!」と目に涙を浮かべる。

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