フラメリア編
1 都世界
ドーム状の天球に覆われた、円形の領域。〈都世界〉――誰にともなく、この領域はそう呼ばれていた。
都世界は、あらゆるものの構成素子である〈妖精〉と、すべての妖精の母であり、自然力のすべてを司る絶対的な存在、神たる〈妖精女王〉によって成る。魂を持たない〈魔物〉が跋扈する大世界の中、都世界は、生きとし生けるもののシェルターとして在った。
いつしか人は、都世界を地理的特性――その地域における、最も影響力の強い妖精の属性に依存する――から十の地域に分割し、それぞれを〈都〉と呼ぶようになった。
雪と氷に守られた都、
花びらの舞う都、
巨大樹の根付いた――現在は焼失してしまった――都、
水資源に恵まれた都、
都世界を照らす光球、太陽と月をいただく都、
火山と鉱石の都、
砂漠の砂煙に包まれた都、
風車とともに生きる都、
土の下に隠れた都、
そして、命の息づかない
これらの地域が環状に連なり、都世界を形づくっているのだった。
そんな都世界に〈魔術〉が生まれたのは、二百年ほど前のことだ。
特殊な言語、
ある学者が発見した「自然力を自在に操る方法」、すなわち魔術は、瞬く間に都世界中に広まった。
「創造主への反逆、神秘への介入とは、なんと愚かしいことか」。魔術を扱うことができない〈一般民〉は、魔術を扱う才能を持つ者を、卑劣な〈
一方の魔術師は、同じ血を持つ同胞を、選ばれし者〈
魔術の誕生から二百年、現在も両者の溝は深い。昔のような大きな衝突まではいかずとも、いまだ、互いに混ざり合って生活することを拒んでいた。
とはいえ、魔術師の卵――マケイアには、血統というものがない。両親ともにマケイアであっても、その子どもが一般民であることもある。その逆もまた、珍しくはない。
魔術が誕生したばかりの頃、マケイアたちはあちこちに散っていた。血縁や家族のつながり、出生地の環境の影響を脱して集い、新たな共同体を作ることは、非常に困難なことだった。
唯一、幸運だったのは、マケイアが同族を認識できたことだ。
マケイアを見分けることができず、同じ一般民すら手にかけることがあった一般民たちとは対照的に、迫害される歴史の中で、マケイアたちは結束を強めていった。
生まれ持った力をともに磨き、魔術師となったマケイアたちは、人が暮らす九の都それぞれに、自分たちの組織を立ち上げた。それらはやがて束ねられ、〈全都魔術師連合〉という大きな組織へと成長した――。
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