第4話 初仕事のおわり

「結局、取り逃したか。」

 青嵐あおあらしは残念そうにそう言った。


「せっかくのなぎの初仕事がこれじゃあなあ。」

 それを聞いて、みなみが言い返す。

「凪は十分働いたでありんす。野暮いうなんし。今日はこれから、凪を改めて迎え入れる宴でござんしょ。」

 みなみは僕を褒めてくれた。そして妖怪に対して甘いとのお叱りも受けた。

「まあまあ青嵐の旦那。凪の太刀筋が見れたんだし、鮮やかだったでしょ。スパーンって。あ、あそこの小料理屋が旨いんで。ささ、入りましょ。」

 ひとまず、解決したということで謝礼を受け取った僕たちは、はやてのおすすめの小料理屋に行き、料理を食べ、酒を飲んだ。


 ほどなくして、僕はタイミングを見計らい、宴の席を外れた。店外にいた岩おとしに話を聞くためだ。岩おとしは店の外にある椅子に腰かけて一人で酒を飲んでいる。


「少しいいか。」

 おう、と。岩おとしは答える。

「たしかにお前さんを呼んだのは、俺だ。黄泉の国を彷徨っていたお前さんを、自分勝手な理由で連れてきた。……そのとき、お前さんに妙な怨念がついていたから取り払ったのさ。それが時化しけと名乗った、あの妖怪になったようだね。」


「……お前さんは、俺を恨むかい?」


 岩おとしは普通の人間とは違う気がする。そういう雰囲気を漂わせている。人ならざる者。妖怪とも違う気がした。半妖の類か。

「僕は、気が付いたらこの姿でこの世界にいた。それ以前の記憶がない。」

「お前さんの姿形についてまでは知らねえ。性別もだ。すでにその姿だった。」

 彼は悪びれずに答える。

「俺は妖怪退治にお前さんを利用させてもらったんだ。悪いとは思っている。」

 僕はいったい何者なのだ。それすらもわからない。


 俺のことを恨んでいるかもしれないが、俺のことを殺すのはもう少し待ってくれ。と、彼はそう嘯くと手に持っている酒を飲んだ。

「聞きたいことがたくさんあることは分かる。けど、今日はお前さんの宴だぜ。また今度ゆっくり話すから、今日は楽しめ。」

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