【旅】機械の彼と旅の夢

「ほう」

「どうしましたか? 博士」

 私の最高傑作ロボットである彼は、ジャーナルに目を通していた私に問うた。

「近頃は冷凍睡眠を伴う遠距離移動の際、夢を見るよう脳に処置を施すらしい。旅の映像を選ぶ人が多いそうだ」

「旅の夢というわけですね」

「…ふむ、文学的な素養も対話にくみこむことができるようになったようだね」

「はい博士。慣用句や詩的な表現、例えなどのデータの蓄積に努めております」

「目覚ましい学習の成果だ」

「ところで旅といえば、博士は私よりも先に旅の予定があるものと思われます」

「おや。学会の予定でもあったかな」

「少し先ではありますが、冥土の旅と言われる旅路でございます」

 そういうと彼は、満足げに一礼した。

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