中学・高校⑬ 願書 中編

すぐに僕は家中を探した。


ゴミ箱をひっくり返し、ベランダにあるゴミ袋をぶちまける。中に北大の願書が紛れてないか何度も見る。


ない。ない!どこにもない!!


半狂乱の状態で行ったり来たり、繰り返し繰り返し探す。


そんな僕に母親は言う。

「そんなとこ探しったってないわよ。とっくにゴミに出したもの」


おいおい、てめーは冷静だな!


なんでこいつはそんなに平然としていられるのか。僕の将来に関わる大事な書類を勝手に捨てておいて!むしろゴミをひっくり返した事に迷惑そうな顔さえしている。


当の僕は半ば泣きそうになっていたと思う。


意味不明!意味不明!


頭の中はパニックだった。


――――――――――――――――――――――――――


その日の夜、K氏が帰ってくると、僕は親たちに直談判することにした。「北大医学部を受験させて欲しい」と。


これは憶測だが、親たちの反応から察するにK氏も北大の願書の事は知っていたようだ。たぶん母親が見つけたその夜にK氏に相談し、二人の出した結論が「僕に渡さずに処分する」というものだったらしい。


僕は順を追って説明した。


センターの結果が悪く、志望校の変更を考えたという事。より2次偏重の北大の方が今後有利になるという事。九大と北大は偏差値的に同格で、決して志望校のレベルを下げたというわけではないという事。そして塾の先生の提案であるという事。


万一不合格となって、浪人生活を送るのは僕はもちろん、親だって嫌だろう。

もちろんリスクはあるが、現役合格を目指すには決して悪くない選択だ。


腕を組みながら僕の話を聞いていたK氏は僕の話が一通り終わると、こう告げた。


「ダメだ。九大以外受けることは許さない。」


うわーー。始まったーー。K氏の頑固親父モード。このモードに入ったら人の言うことは頑として聞き入れない。シャッター全閉。閉店ガラガラ~状態。


しかし、今回に関しては僕も引きさがれない。先程の説明を繰り返しては北大を受験させて下さいと懇願する。


敬語を使うのも癪だし、懇願なんて…と思ったが、仕方がない。


お願いしては突っぱねられる。そんなやり取りをしばらく繰り返した後、K氏はとどめを刺しに来た。


「ダメだ。九大を受けないのであれば、受験料は一切払わない。大体北海道なんて遠すぎる。第一お母さんに何かあったときどうする?」


オワタ/(^o^)\

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