中学・高校⑩ 履き違え

お金を借りていたのはN君という友達であった。

N君はその頃には高校生でありながら一人暮らしをしており、彼の家は友人たちのたまり場にもなっていた。


そうすると当然帰りが遅くなり、親も不審に思う。「授業が長引いて出るのが遅れた」「わからない事があって質問していた。」などと言って誤魔化していたが、どんどん帰りが遅くなるにつれて追及がしつこくなっていた。


「うそをつけ」「本当は何をしていた?」「誰といた」…

追及は終わらない。


実はN君から借りているお金も膨らみ、8万円へとなっていた。もはや自力では返せない金額になっており、その焦りもあった。


ついN君の名前を出してしまう。そして借金のことも。


そのまま親たちに連れられ、N君の家に行き、借金を返済した。返済のお金は親が出してくれた。


そして家に帰りつくと、親は前回のテストの学年の順位表を引っ張りだしてくる。それを眺めてN君の名前を見つけると、言う。


「N君はお前よりも順位が下じゃないか。そんな奴とは付き合うのをやめなさい」


でた。


実際にそんな事を言うやつがいるんだ、と半ば呆れた。漫画や小説などでしか見ない都市伝説的な存在かと思ったが、こんな身近にいたもんだ。まあ、彼らならいつか言いそうな気がしたけど。


もちろん友人に借金をして、なおかつそのケツを親に拭いてもらっている自分は最低だ。しかし、それを棚に上げて言うのもなんだが、そんな事を平気でのたまう親たちが憎たらしくてしょうがなかった。


まるで自分達が悪いとは全く思っていないようだった。僕が今高校生活をこじらせているのは友人のせいだと思っているのだ。悪魔のような友人の誘惑のせいだと、そしてそれを自分達が断ち切ってやる、悪い虫は排除する!とでもいうのか。自分達の過度な「教育」の結果だとは微塵にも思わないらしい。


さすがにムカッとして返す「誰と付き合おうがオレの自由でしょ!」


するとK氏は言う。

「自由を履き違えるな!!」


じ・ゆ・う?


その言葉がK氏の口から出てくるとは思わなかった。借金をしたり、塾をさぼったりする自由が正しいとは思ない。思わないが、誰が自由を語っている?


怒りと後悔とやるせなさで頭がこんがらがる。


教えてください。

じゆーってなーに?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る