小学生⑧ ポケモン 前編

そのころの小学生を熱狂させたものといえば、ポケモンだろう。

クラス中のみんなもやっていた。


なんと僕もポケモンのソフトを買ってもらい、実際にプレイすることができた。


ただし、みんなより1年遅れで…


しかも一日に許されていたのは30分までであったから、進めるのも遅かった。続きがしたい、でもできない。


その結果、コソコソゲーム人間が誕生したのである。親が外出したり、風呂に入った瞬間、勉強の手を止め、押し入れのゲームボーイを引っ張りだし、ポケモンをやりだす。親が帰ってくる車の音や風呂から上がってくる気配などにはだいぶ敏感になっていた。


しかし、親たちも親たちだ。自分たちが不在の間に僕が勉強をサボってないか、チェックしてくる。


「なんかさっきの所から進んでないんじゃないか?」


ギクリ。鋭いやつらだ。


その対処法として、文字おっきめ行広め作戦やプリント1枚飛ばし作戦、解答丸写し作戦、解答丸写し作戦・改(5分の1ぐらいは間違いを散りばめる)などを駆使し、ポケモンのこそこそプレイを続けていた。


そうすると、今度はポケモンのシステムによる壁にぶち当たる。一部のポケモンは最終進化をするのに他のプレイヤーとトレードしないといけないのだ。自分はゴーストタイプのポケモンのゲンガーを手に入れたかった。進化前のゴーストがレベル25以上の状態で通信トレードする必要がある。自分は一人っ子で兄弟もいないので、友達とするしかない。でも、自分には友達とゲームで遊ぶ時間など与えてもらえなかった。


トレードさえすればいつでもゲンガーに進化にできる状態であったが、当然のことながらそんな機会など訪れず。やがて僕のゴーストはレベル50を超えたが、ついには進化することなく、ゲームボーイごと押し入れで眠ることになったのだった。

(次に起動した時にはアイテムの個数を表示する数字の欄にお花畑ができているバグ状態になっていた)

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