小学生⑤ 免罪符

それくらいの時期から「あなたのため」「お前のため」だとかいう言葉を親たちはよく使っていた。


勉強に関してはもちろん。それ以外でも。


ある日宅配のお寿司を注文した。3人ともおなか一杯になるまで食べたが、ちょっと注文した量が多かったせいか、4・5貫残っていた。その残った寿司を見て、K氏は言う。「ほら、お前のために残してんだから、食べなさい」

いや、僕だっておなか一杯である。K氏も同様だろう。素直に「おなか一杯で食べられないんだけど、残り食べられる?」と言えばいいのに。わざわざ恩着せがましい言い方をしてきたそのやり口にムカついた。


ある日母親が「ネギを食べると頭がよくなる」という雑誌の記事を見て夕食のおかずを作った時もひどかった。山盛りのネギを海苔でくるんで、それに醤油をつけて食べさせる。憎たらしいことに皿いっぱい盛られていた。ネギ農家の方には申し訳ないが、ネギの辛味が強すぎて正直食えるものではなかった。2・3個食べてもう無理だといったら、「食べなさい。あなたのためなんだから」


まるで「あなたのため」「お前のため」という言葉を使ったらすべて許されるような様子であった。そんな免罪符を二人は事あるごとに使い、自分たちの行動を正当化する。僕がそれに異議をとなえようものなら、二人がかりで反論してき、「おまえのためにやっている事がなぜわからないんだ」「お前はまだ子供だからわからないんだ」と返り討ちにあった。


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