小学生③ ケアレスミス

こういう恐怖による勉強強制は残念ながら、子供の知的好奇心を殺しにかかるものの、見た目の成績の向上には寄与してしまうから困ったものである。塾での成績も上位をとるようになると、親たちは「1位を取って当然」と思い出してきた。


2年生の年末、国語・算数の2教科のテストが返ってきた。国語は満点の100点、素晴らしい。しかし、算数はというと88点。間違ったところを確認すると、角度の問題で2か所間違っていた。よくある「次のAとBの角度を求めなさい。」のやつで、Aの欄にBの角度、Bの欄にAの角度を書いてしまっていたのだ。


なんてこった。まぎれもないケアレスミス。1問6点なので、ちゃんと注意して解答欄を書き間違えなければ算数も満点だったのである。そうしたなら、もちろん順位も一位であった。悔しさと同時に猛烈に嫌な予感が襲ってきた。


親に見せたくない。絶対見せたくない!!


いってもそのケアレスミス以外は全問正解だったわけだし、塾の中でも上位ではある。ただ、だからといって二人は納得しないのだ。


案の定、家に帰ってその答案を見せるとK氏は激怒した。「何をしているんだ。みすみす1位を逃したではないか。しょうもないケアレスミスなんか二度とするな!」と。その日の怒りは凄まじいものであった。自分はそのまま玄関に連れていかれ、服を身ぐるみはがされた。そして「頭を冷やして、反省しろ」という言葉とともに外にほっぽり出された。時期は12月。寒空の下、文字通り真っ裸である。


もしTV番組なら「よい子はマネしないでね」ってテロップが出るやつである。訓練された芸人しか許されないはずの罰ゲームにより、寒さと屈辱感で震えながら「ケアレスミス」の恐ろしさを体に刻み込まれた。

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