No.6-3
いつか。
いつか、好機さえあれば。
私は誰に命ぜられるでもなく、自由に空を飛ぶんだ。その感情は願望というよりは一種の確信めいた感じがあったように思う。
私達四機はワルキューレ小隊と呼ばれた。二機を一個小隊として、四機で二個小隊。コールサイン、ワルキューレ。私は三番機、コールサイン、ワルキューレ03。
私達は戦い続けた。私達よりも偉い人たちが決めた通りに、ここに爆弾を落とせと言われればその通りにしたし、敵に出会えばそれを撃ち落とした。私達はそれぞれ、飛ぶことだけを目的として今日に至るわけで、きっと下手ではなかったんじゃないかなと思う。少なくとも、命令された作戦を遂行出来なかったことは一度も、ない。
時が過ぎ、季節が移り変わるのと同じように、私達の飛ぶ空もまた変わる。前までは太陽が恋しくなるようなどんよりとした空に居て……今は、天上に輝く太陽の元、大きな雲の合間を縫うように飛ぶ、うだるような暑さの中にいる。
ある時。
私達ワルキューレ飛行隊は前線支援に駆り出された。
敵が粘り強く抵抗を続ける地点に対し、私達が爆弾を落とす。本来であれば専用の爆撃隊が向かうべきところに私達が行くのだ。言ってしまえばこれは適材適所の逆を行くような任務で、隊長機のパイロットは一言
「牛刀でトマトを切るようなものだ」
と言っていた。私にはよく分からないが、取り敢えず私達向けの任務ではないのだと言いたいのだけは理解出来た。
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