No.6-4
「コントロールタワーへ。こちらワルキューレ03。所定の位置に到着。コンディション・オールグリーン<機器に問題なし>」
灰色の航空機四機が飛行場から飛び立つ。脱落機はなし。
結局、ワルキューレ航空隊は例の任務を遂行しなければならなくなった。
「仮に敵軍の沈黙を目的とするのであれば、バンカーバスターを使うべきです。我々が行ったところで焼け石に水でしょう」
隊長はそう言って、今度の任務に対して不服を申し出たが、決定は覆らなかった。
「さて、ワルキューレ諸君。珍しく低空侵入だぞ。気をつけて飛べ」
それでも隊長は空に出ればいつもの調子で私達に指示を出す。
そう言えば、私は以前隊長に質問をしたことがある。
「隊長は、空を飛ぶのは好きなんですか?」
その時、隊長は煙草を吸っていた。
「ん……まあ、ね。私は嫌いじゃない。君はどうなんだ?」
「好きです。好きですけれど……」
「ならそれでいいじゃないか。それにな」
火のついた煙草を口にくわえながら、隊長は言った。
「私達は、かつての仲間の死体を足蹴にしてここに立っているということを、忘れちゃならん」
隊長の言ったことは事実であった。
私が自由に空を飛びたいと願うのは、自由に空を飛ぶどころか、生きることさえ許されなかった仲間たちへの冒涜なのかもしれない。
私の心中にあるその悩みは、贅沢なものなのかもしれない。
けれども私は空に自由を見出していたかった。事実上それに自由などないのだとしても、空は自由であって欲しいと、私は思っていた。
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