No.5-36
「質問を、させてください」
キャンプに居るその場の全員が私を見る。中にはあからさまに私を睨む者も居る。それでも私には、言わなければならないことがある。
「質問を認めよう。ミカサくん」
「それは事実上の特攻作戦です……事例がないわけではありません。第二次印パ戦争における『アサル・ウッターの戦い』においてインド陸軍第四擲弾兵大隊所属の下士官によって実行され、敵戦車軍の攻勢遅延を齎したものです。しかし、これを実行した下士官は死亡しております」
「しかし、敵軍を食い止めることには成功した」
「ですが!」
「他に手があるのであれば、拝聴しよう」
「火砲戦力を積極的に移動させることで、撤退しながら敵軍の攻勢遅延を齎すことが可能です」
「その場合、敵軍の戦力減退の可能性は著しく低下する。何より、我々には撤退するだけの戦略的縦深を持ち合わせていない」
「砲兵による攻撃の後、対戦車ロケットによる敵戦車への攻撃」
「否。対戦車ロケットは無誘導式だ。確実に当てられる保証はないし、確実に当てられる距離まで引き付ければ発射する兵士は確実に死亡する。変わらないんだ」
「しかし、それを皆さんは許容するのですか」
キャンプに居る面々は軍曹と私とを相互に見る。
エダ軍曹は笑った。にやりと、笑みを浮かべた。
「この作戦における主攻。つまり、無反動砲を積んだ車両での突撃を敢行するにあたり、その任を志願するものはいるか」
二人の手が、挙がった。
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