慟哭の英雄_執筆後記
慟哭の英雄をお読みいただき、ありがとうございます。作者の栗印緑です。
ここからは編集後記ならぬ執筆後記として、あとがきとも蛇足ともつかない諸々を吐露させていただこうかと思います。
「龍の峰の医者」シリーズと、その前日譚となる外伝、その全ての始まりとなるのが、今回の「慟哭の英雄」です。これ以前に起こった事象は今後、回想などで語られることはあっても、現在として語られることはありません。
兎にも角にも、一番最初の物語。世界観やキャラクターなど、語るべきバックグラウンドが盛りだくさんで、設定を整理しつつ小説としての体裁を保つのが精いっぱいだった、というのが正直な感想です。ぶっちゃけた話、百科事典形式でまとめてしまえたらどんなにラクだったことか。とはいえ栗印作品の『サービスシーン』に位置づけられる苦痛表現だけはどうしても削れなかったのですが……。
本当は、教会や神話の説明の後、スコウプくんにはケストラー師の図書館で魔法の基本設定講座を受講いただく予定でした。が、長くなりすぎるのと疲れるのとで、今回は割愛となりました。本当は、図書館の地下の何もない空間に、呪文一発で巨大な書架がガキーン!ゴゴゴーッ!と生えてくるカッコいいギミックなども用意していたのですが。せっかくの登場シーンを奪われたんですから、ケストラー師、そりゃラストシーンに怒鳴り込んでも来るわけです。おじいちゃんかわいそう。代わりに次作で、おっぱいのでっかいおねえちゃんが魔法について教えてくれる予定です。
20年以上私の中で温め続け、半ば腐りかけてすらいた当シリーズですので、今回のお話も20年以上前、初めて思いついたころにはあらかた概要は決まっていました。20年前と言えば前世紀ですよ、前世紀。2000年問題とか大騒ぎしていた時代の草案をようやく今書き起こしたわけです。遅筆にもほどがありますね。
とはいえ、20年前から決まっていたのはスコウプとプライムの容姿や性格、当日の状況とスコウプが医者をぶん殴るところ(書いてみたらいつの間にか司祭が殴られて、医者は足払い食らってました)、ありえない旅の速度とスコウプの過労と背負子の形状と材質くらいです。ここ数年で思いついたのは刺青の紋章のデザインと重力整復師、遠距離攻撃用にスリングを持つこと、プライムの腕にリボンを巻くことくらい。後はだいたい、書きながら思いつきで纏めました。
なので、神話なんかめちゃくちゃ即興ですし(刺青の紋章は決まってたのに!)、アメリアが業魔とか言い出したときは我ながら「は?」ってな気分でした。初耳です業魔とか。業魔認定のために旅立った、というのもわたくしつい二週間ほど前に知りましたマジで。つまみ食いのように後のエピソードをいくつか先に書いているのですが、いや、やっぱり作品は時系列を追って書かないとダメですね。作者自身がびっくりしちゃいます。
冒頭では、ラブラブなプライムを描きました。滅多に女の子を描写しないのですが、プライムを愛する気持ちがスコウプの旅の理由になるわけですから、ここはなるべくかわいく描いてあげなくちゃ、と頑張ったつもりです。うまく書けたかどうかは分かりませんが、長年イメージしていた女子が楽しげに動いてしゃべるシーンが、次に描かれるのは本編のラストくらいなのかと思うと、妙に悲しくなってしまい……。中年になって涙腺が弱くなったせいか、2章を書きながらちょっとだけ、ちょっとだけ泣きました。自分の書いているものに自分で涙するなんて、結婚式の父への手紙以来のことで、我ながら驚きです(あの手紙は我ながら最高傑作でした。大学の学費と引き換えに父が得たもの、と考えると、600万円以上の価値があったのかはわかりませんが)。
プライムさん、回想シーンでは今後もちょいちょい出てくるはずなので、まだまだ頑張ってもらいますけれど。
これっきりのキャラクタといえば、クレシュでしょうか。この方も、たぶん以降オンタイムでの登場はない予定です。いや、案外どこかで不意に再会したりするかもしれませんが。回想で少し登場いただく予定なのと、本編では別の意味でキーとなるキャラになるはずなので、わりと多めの活躍を心掛けました。
後から読み返して、クレシュってパトレイバーの後藤さんみたいなしゃべり方するなぁ……などと他人事のように思いました。ああ見えて、実はモデルは後藤さんじゃありません。私の大学時代の部活の部長です。いろいろあって半年しか在籍しなかった部活でしたが、部長の飄々としつつどっしりとした存在感は私の中で稀有な存在で、気のいい兄貴分を描こうとするとついついモデルに引っ張り出してきてしまいます。
次作も、痛いわ熱いわぐるぐる巻きだわスコウプくんは大変な目に遭う予定になっていますが、今作に引き続きお目通しいただければ幸いです。
2018.10.29 栗印 緑 2019.04.18 改稿、カクヨム初出
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