幼い姫と嘘つき王子さま③

 見れば見るほど、なんて美しいのだろうとつくづく思う。完璧という言葉が似合うのは、きっとこの世に彼女一人。

 ハンドルを握る手、開いた窓から入り込む風にたなびく金色の長髪。まるで美術の教科書に載っていたギリシアの彫刻みたい。腕が無くて、世界一美しい比率だとかいう黄金比のプロポーションをした女神、なんて名前だっけ……。そう、思い出した。ミロのヴィーナスだ。彼女の完璧さを例えるのならミロのヴィーナスがぴったり。彼女への賛美に、過言だとか大袈裟だとかいう言葉が入る余地はきっと無い。本当に、この世に存在しているのが信じられないくらい綺麗だもの。

 「まだ、夢だと思っているのかい?」

 スカーさんは、わたしの考えを見透かしたように訊ねた。

 「どうしてわかったんですか」

 

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