第102話 美少女は正義
鈴木「(――後日談。図書委員として初めての合宿は、あれから涼葉さんの背筋が凍るほど怖い話で幕を閉じた。その結果、当初俺は廊下で寝ることになっていた訳だが、明彩と柳生さん、笹島さんに囲まれて一夜を過ごした。緊張し過ぎてなかなか寝付けなかったのは言うまでもないだろう。あぁそうだった……、後から知ったのだけれど、涼葉さんは、夜の森に一人で入り、刀のような鉛筆の素振りを1000回していたらしい。その間に、妖怪と遭遇し退治もしたとか。」
――ん?
鈴木「(ここは教室で、窓の外をぼんやり見ながら、合宿を思い返していると隣席から消しカスの塊まりが飛んできた。明彩に文句を言ってやろうと、視線を向けると明彩の奴は、視線を外し、知らんぷり。)」
明彩「……」
鈴木「……」
明彩「……」
鈴木「……」
明彩「……」
鈴木「(何度かタイミングを見計らい、ようやく顔が合った。細い体で風が吹くと自然と髪の毛とスカートが揺れ、周囲を圧倒する可憐さを持ち合わせているその容姿は、言うまでもなく学年一だ。)」
………………
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鈴木「(じっーと、視線が合い続けている。子犬のような目が何かを訴えてくる。)」
………………
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明彩「あのさ、私……教科書全部忘れたから見せてよね!」
鈴木「全部?!」
明彩「仕方ないでしょ、今日は寝坊したんだから。慌てて飛び出したら、教科書忘れたのよ!」
鈴木「いや、いいけど。机こっちに近づけてこいよな。」
明彩「はぁあああ!!! あんたが机を私の方にくっつけに来なさいよねっ! なんで私からあんたの方に行かないといけないのよっ。」
鈴木「じゃ別に教科書見せてあげなくてもいいんだぞ……。」
明彩「……キリキリ」
鈴木「(明彩の奴が歯ぎしりしながら、怒りを露わにしている。)で、どうするんだ? 教科書は見せて欲しくないのか?」
明彩「ご、ごめんなさいっ。お願いするわ……鈴木様!」
鈴木「お前顔が全然笑ってないけど、まぁいいか。今、俺のことを様って呼んだ訳だし!」
明彩「バカ! あんたが言わせたんでしょ、パワハラ男! 本当最低っ!」
鈴木「(頬をぷくぷく膨らませ、拗ねた顔ですら可愛い――。あぁ美少女って本当に正義だな……。俺は仕方なく、机をくっつけてやることにした。)」
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