第100話 混浴
鈴木「(笹島さんとオルが話している横で、俺は一冊の本を手に取っていた。表紙のタイトル文字は、かすれ読める状態ではなかった。まぁ見えたとしても、文字が象形文字みたいで、理解は全くできない。ただ何かに惹かれ感覚があって一冊の本を手にし、ペラペラとページをめくっている。ところどころに挿絵が描かれていて、察するに妖怪町の成り立ちや、歴史と言ったところだろう。続けてページをめくっていくと、あるページで瞬間――、意識が吹っ飛びそうになった。)」
………………
………………………………
鈴木「(そこに描かれていたのは、俺と明彩の姿だった。もちろん人間じゃない。俺はカッパとして描かれている。けれど・・・これはどう見ても俺だろ。毎日鏡で見ている自分の顔を見間違えるはずがない。そして、俺の隣に描かれている明彩の容姿については、少し耳が長かったり尻尾が生えている違いはあるが、これだけそっくりなら見間違える方が難しい。その可憐な容姿はそのまま明彩だ。ってことは……、どういうことだ。あああぁぁぁあああ、よくわからない。頭パニックだ! 次ページをめくると、俺と明彩が手を繋いで、妖怪と戦う絵が描かれていた。これ、どう見ても恋人、いやそれ以上の関係にしか見えない……。)」
明彩「ちょっとあんた勝手に、何見てんのよっ?」
鈴木「い、いや! 別に。なんでもない。」
明彩「あっそう。笹島さんの話し合いが終わったみたいだから、旅館に戻るわよっ。置いてけぼりにならないように、手でも繋いであげようか?」
鈴木「――お前、それまじで言ってんの?」
明彩「じょ、冗談よっ! どうしたの、変なのっ。」
鈴木「(なんでだ。心臓がドキドキしてる。だって俺とお前は、恋人? それとも、婚約者……。待て待て。これは俺だけの秘密だ。あいつも知らないことかもしれない。もしくは、知っていてずっと黙っているのか……。)」
涼葉「鈴木、顔色悪い。」
鈴木「……大丈夫大丈夫だ。ちょっと考え事をしてただけ。(その考え事はずっと頭から離れてくれることはなかった。旅館に戻ってきて、和食をみんなで食べている間もずっと。食事が喉を通らなかった。しかし、そんな俺の考え事を一瞬でかき消すような発言が笹島さんの口から――。)」
笹島「みんなに言い忘れてたんだけど、この旅館は、混浴なんだ。あはは。」
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鈴木「(沈黙。まぁそうなるだろ。)」
涼葉「……私は、大丈夫。」
柳生「私も、鈴木が平気なら大丈夫だ!」
明彩「あんた、女の子の大切なところ見たら、承知しないからねっ!」
笹島「じゃ後は、鈴木くん次第だね。もしあれだったら、時間帯で鈴木くんとは一緒にならないように調整も出来るんだけど……。それはちょっと寂しいかな。一緒に温泉に入ると、仲良くなるっていうでしょ。どうかな? 背中、洗いっことか楽しいと思うんだけど。あはは。」
鈴木「(唾を飲む音が、響いてしまいそうだ。昼間に、海で美少女に囲まれた時でさえ、我を失いそうになった、それなのに今度は、混浴!!! これはさすがに、男として、断るべきではないだろうか。そうだ、断ろう。俺は男なのだから。)」
笹島「鈴木くんと一緒だったら、温泉も楽しいと思うの。どうかな? 鈴木くんは男性ひとりだから、いろいろと気を使うかもしれないけど、私達は鈴木くんのことを、とてもいい仲間だと思ってるの。だから気にしないで欲しいな。もし、ダメって言われたら、同じ図書委員として絶望しちゃうかも。だから、一緒に温泉に行きましょう。あはは。」
鈴木「そんなに気を使ってもらって、嫌ってことはないけど……。(そこまで言うと、笹島さんに手を取られて、みんなで一緒に温泉へ向かう。そんなににこにこされたら、こっちまで嬉しくなるだろ。――混浴と書かれた暖簾をくぐり、更衣室へ入る。俺たち以外の利用者は見当たらない。涼葉さんが妙に色っぽい仕草で服を脱いでいる。正直、ものすごく可愛いです。だがこれ以上見たら、R18だ。そこは、ぐっとこらえて視線を逸らす。)」
笹島「鈴木くん、いつも支えてくれてありがとう。お礼に服を脱がせてあげるね。男性一人だから恥ずかしいと思うけど……そこは、私が支えてあげたいの。いつも無理なお願いばかりして、ごめんね。私はつい鈴木くんに甘えすぎてしまうから。少しは優しくさせてね。」
鈴木「(流れるような手つきで、俺の服が脱がされていく。ささっと大切な部分は隠したが、心臓が爆発寸前だ。)」
明彩「ネギ男っ! ほらっ、背中流してあげるんだから、早く来なさいよっ!」
鈴木「(……女の人って温泉だと大胆になるのか……。なんか体の血が頭にのぼりっぱなしで、思考が出来ない。)」
柳生「頭は、私が洗ってやろう!」
鈴木「(背中に柔らかい弾力のフルーツがあたる。もうこうなったら思いっきり青春を楽しもう! と、心に決めた。)」
涼葉「鈴木、次は私の体を洗って。」
鈴木「恋人かっ!」
涼葉「私は、鈴木のペット。だから、洗って。」
明彩「こらーっ涼葉! 抜け駆けはダメっ!」
笹島「温泉ってみんなで入ると、やっぱり楽しいですね。みんなで合宿にこれて、本当に良かったです。あはは。」
ーーー
おまけ
笹島「あはは。記念の100回目でしたね。ありがとうございます。」
鈴木「混浴が偶然の100回目に・・・。お前ら狙ってたのか?」
涼葉「偶然は、必然。」
明彩「てか、さっき! どさくさに紛れて、私の胸揉んだでしょ?」
鈴木「(まじか! あの時……、あの時なのか! 柔らかかったぞおおお!)」
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