第98話 地下の存在
鈴木「(夏メ蒼石が、――ここほれわんわん。と、合図した床板を外していくと、地下へと続く階段が現れた。あっ、そうだった。忘れていたことがひとつ。先ほど柳生さんは目を覚ました。気絶していたことがショックだったらしく、かなり落ち込んでいるご様子だ。)」
柳生「……ぁ……が。……っ…………。」
鈴木「(言葉になっていない。)」
笹島「柳生さん、元気を出してくださいね。明彩さんと涼葉さんの妖魔は、すごかったんですよ。鈴木くんもがんばってくれましたし。また、ご褒美考えておきますね。あはは。」
柳生「……わ、……わ、私も戦いたかったのだ。私なら、もっと可憐に戦えた……。」
鈴木「(励ますつもりが、余計に落ち込ませてどうする・・・。)」
明彩「どんまい、どんまいっ! 妖怪と戦って得することなんて、何もないでしょ!」
笹島「そ、そうだよね。あはは。」
鈴木「それより、階段。そろそろ地下へと入って行こうぜ。何があるか、お楽しみってやつだ。」
柳生「おー! 妖怪が出たら、私が退治するからな。妖怪、妖怪、妖怪。妖怪さん出てこい。出てこい。」
鈴木「(涼葉さんの懐中電灯の明かりを頼りに、地下へとおりていく。少しばかり、長い階段だったがおりると、今度は古びた扉が見えてきた。その扉を開けると、)」
――――――――
――――――――――――――――――
笹島「っ――本………。これ全部本だよ! ……えっ、夏メ蒼石さんが書いた本だよっ! すごい、すごい夏メ蒼石さんの書いた本がたくさんあるよ。それに、まだ世に出てない完成原稿もこんなにもある! うわぁ感動するなぁ。私が一番最初の読者になれるなんて、嬉しいよ。」
……
…………………………
……………………………………………………
鈴木「……。(笹島さんが、飛び跳ねて喜んでるところ悪いのだが、どうやらここを守る番人がいるようだ……。ゆっくりとこちらに向かって、何かが近づいてくるのが分かる。)」
柳生「妖魔だな。」
涼葉「くる。」
明彩「敵? どんなやつ?」
涼葉「分からない。ただ私は……もう力が残ってない。」
明彩「言っとくけど私も、もう全部使い果たしたんだからっ。」
柳生「なるほど。神様が用意してくれたばんかいのチャンスがきたというわけか! 力が力が力が力が、湧いてきたぞお。ようやく私の出番だ。我が奥義を披露絶好の機会に感謝しよう!」
鈴木「(……元気を取り戻してくれたのは、いいが……。それにしても、妖魔が残っているのが、柳生さんただ一人とは……。とことんツイテない。残念としかいいようがないだろう。)」
柳生「――――――!」
鈴木「(柳生さんが、妖怪との対面を前に、鎖鎌を空に掲げポーズを決めた。柳生さんの足元に、でかい結界が現れる。そして風が――吹き荒れる――――――。)」
柳生「――水は澄み渡り、石は流れ、木の葉は沈み、牛は嘶(いなな)く、馬は吼(ほ)え、」
鈴木「まだ妖怪が現れた訳じゃないだろ……。」
柳生「止めてくれるな。現れた瞬間に吹き飛ばしてやろう。」
明彩「血の気が多いわねっ。でも、貴依奈のいいところでもあるわねっ!」
鈴木「……。」
涼葉「敵はすぐ、そこ。くる。」
鈴木「せめて姿を確認してからにしろよっ!」
――――
――――――――――
――――――――――――――――――――――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます