第93話 夏メ蒼石
鈴木「(夏メ神社の鳥居をくぐる。その途端に、背筋がゾクッとした。)」
涼葉「――妖魔の中。」
柳生「鈴木、私の近くを離れるな。」
明彩「なになに? なにかあったの? えぇぇ私だけなんか、置いてけぼりみたい。わかんないよぉー。」
鈴木「(なるほど。明彩の奴は鈍感なのか。うん、頼りにならない奴だな。あいつとは、関わらないようにしよう。しかし、そうなると、この中で、涼葉さんと柳生さんが断然頼りになる訳だが……。それはさておき、なんの力もない笹島さんを危険な目に合わす訳にいかないだろう。てか、おっぱいを揉ませてもらったお礼は、必ず返さないと!)」
明彩「――えっ! 今見た?! 狛犬の目が光ったわよっ! 何かいるのね。涼葉! やっつけてしまいなさい!」
涼葉「ごめん。私の懐中電灯。」
明彩「涼葉ったらもうおー。紛らわしいんだからっ! こんなの全然怖くないんだからっ!」
鈴木「お前……めちゃくちゃ、ビビってるだろ。」
明彩「全然っ! あんたが怖すぎて、歩けないっていうんだったら、仕方ないから手を繋いであげてもいいんだからねっ!」
鈴木「(返事をする前に、ささっと手を繋がれた。そんなに怖かったのか。この暗闇なら、手を繋いでいても誰にも見えていないみたいだし、俺も怖くないと言えば嘘になる。だから、繋いだ手をぐっと引き寄せると、明彩が小さな声を出した。)」
明彩「エッチなこと想像したら、許さないわよっ。」
鈴木「するかっ。(にしても、明彩の手って小さくて柔らかくて、なんか――、……かわいぃ。)」
笹島「本当に、妖怪って、この世にいたりするんですか……。私、見たことがなくて……。」
柳生「もちろん、いるぞ。ここは、すでに妖魔の中に入っている。つまりは、妖怪のテリトリーの中だ。まぁ私がいれば、なんの問題もないだろう! いざとなれば、宝蔵院爆炎龍を一発ぶちかましてやる。」
鈴木「いや、それだけは……遠慮してもらいたい。」
笹島「柳生さんって、本当に頼もしくて素敵ですね。あはは。」
鈴木「(笹島さんは、拝殿を上がり、本殿へと向かう廊下を進んでいく。俺たちもその後を続く。)」
……じ〜。
…………じ〜。
……じ〜。
…………じ〜。
……………………じ〜。
……じ〜。
…………じ〜。
……じ〜。
…………じ〜。
……………………じ〜。
鈴木「どこからか、視線を感じて、あたりを見渡すと、障子に無数の目が現れていた。)」
涼葉「目目連(もくもくれん)。」
柳生「監視されている訳だな。」
鈴木「それって、誰だよ?!(そう言って後ろを振り返る。……思わず息をのんだ。柳生さんと明彩の姿が消えていたのだ……。その奥に老婆の影が見え、追いかけようとする。)」
涼葉「あれは隠れ婆。隠し神の一種。鈴木、追いかけると危険。私がいく。」
鈴木「いや、ちょっ……!(涼葉さんの足跡は、廊下の角を曲がったところで消えてしまった……。)」
笹島「鈴木くん、私たち取り残されちゃったね。あはは。どうしよう……。」
鈴木「(なんとか気持ちを落ち着かせようと、声にする。)涼葉さんなら、すぐに戻ってきてくれると思うけど……。」
笹島「ですよね。それでは、私たちは、原稿が現れるという内陣に進みましょう。」
鈴木「内陣って?」
笹島「神体を安置する場所のことですよ。そこには、夏メ蒼石さんが祀られ、原稿が現れるといわれているんですよ。あはは。この障子を開けると、内陣のはずです。」
鈴木「そっか。それなら――(と、障子を開けた瞬間。――目の前の天井から、気を失い蜘蛛の糸に縛り付けられた、明彩と涼葉さん、それに柳生さんの姿がぶら下がっていた。その下で、皮膚がただれた老人が、1人。長い爪を明彩と涼葉さん、柳生さんに突き立てる。そうして長い舌で、明彩の頬をペロリと、舐めた。)」
夏メ「私の名前は、夏メ蒼石でっす! この美少女達は、私の血となり肉となることを誇りに思うのでっす。私が永遠に小説を書き続ける。それは、神の望み。それゆえに、あなた達はここに導かれたのでっす――!」
――――――
――――――――――――
――――――――――――――――――――――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます