第91話 おっぱいの罠

笹島「みんな、ちょっといいかな。図書委員のみんなで合宿に来たのは、仲良くなるため、それもひとつなんだけど。――もうひとつは、本について理解を深めること。それは、これから一緒に図書室を盛り上げていくうえで、とても大切なことだと思うの。」


明彩「うんうん。みんなで本について理解を深めようっ! で、どうすればいいのっ?! 何読む? 本の歴史でも勉強する?」


鈴木「(明彩のやつ、やけに笹島さんのことを気に入っているみたいだな。笹島さんのいうことには、とても素直に聞いている。――笹島さんは、いつもより声のトーンをゆっくりと落としながら、話し続けた。)」


笹島「隣の神社は、夏メ神社って言うんだけどね。……実は、ちょっと変わった噂があるの。」


鈴木「(柳生さんが目を尖らせた。何か嫌な予感でもするのだろうか。)」


笹島「…………夏メ神社。その名前から、察しはつくかもしれないのだけど、夏メ神社とは、日本の文豪で最も有名な夏メ蒼石の由来ある神社なんだ。つまり、夏メ蒼石を祀っている神社とされているの。というのも、あの蒼石が『我輩は猫であるがゆえに』を執筆するそれよりも以前に、この神社を訪れていたからなの。そして、蒼石は、この神社で執筆活動をしていた。それまで、文字も知らなかった無名の蒼石は、この神社に訪れたその日からまるで別人のように人が変わった。と言われているの。でも不思議なことに……、蒼石がこの神社に来た日から、誰も蒼石の姿を見ていないの。――そして、今でも蒼石の原稿だけが、どこからもともなく現れる……。」


明彩「こわっ! 怖すぎるわよっ! それ絶対に妖怪だからねっ!」


柳生「同感だな。確かなことは、分からんが……。」


鈴木「まじかよ……。」


笹島「私は……夏メ蒼石が大好きで、その原稿を一度でいいから読んでみたいの。これから、夏メ神社にこっそり忍び込んで、蒼石さんに会いに行きたいの。みんな、ついてきてくれるかな……?! 心強い図書委員のメンバーなら、例えどんなことがあっても、安心して神社に潜り込めると思うんだけど……。」


鈴木「神社に潜り込む? しかも夜に?!」


笹島「昼間は、人が来ちゃうでしょ……。さすがにそれは、出来ないよね。」


鈴木「そっか……。(いや、同調している場合ではない。笹島さんは、確かに今……心強い図書委員と発言した……。――――――もしかしてだが、この図書委員に妖魔をあつかえる人間が揃っていることは、単なる偶然ではなかったのかもしれない! 全ては、笹島さんの思惑通りなのかも――。あくまで推測だが、そんな風に思えて仕方なかった。)」


涼葉「妖怪退治は、私の専門。」


柳生「我の方が、得意だ。」


鈴木「なんか張り切っている人が2人もいるんですけど……。」


明彩「じゃ、涼葉と柳生さんに任せて、私は先に温泉でも行ってようかなっ! みんな、いってらっしゃい! 元気に帰って来てね! それじゃ!」


笹島「明彩さん、これは本についての理解を深める合宿の一環ですよ。日本の文豪の原点を知る。素敵なことじゃないですか。みんなで一緒に行きましょう。あはは。」


鈴木「(明彩のやつが、頬を引きつらせている。その気持ち、分かるぞ! 俺だって行きたくない!)」


笹島「鈴木くん、……今日は私のおっぱい、揉み……ました……よねぇ……。」


――――ジロリ!!!


鈴木「(ものすごい勢いで、明彩と涼葉と柳生さんの視線が突き刺さる!)」


鈴木「行きます! 夏メ神社、行きます! 行かせてください!!!(笹島さんはやっぱり鬼だ。おっぱいを揉む? とんでもない! 日焼け止めを塗っただけですよぉ。確かにおっぱいは、ちょっと多めに、日焼け止めを塗りましたけどぉ! でもですね、揉んでませんから! いや、さりげなく……揉みましたけどぉ。あぁぁぁぁあああ罠だったとは……。)」

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