第90話 笹島さんのフルーツは柔らかい

鈴木「(笹島さんに、手を引かれて海辺までやってきた。すでに、明彩たちは、はしゃいで海の中へと入っていくところだった。笹島さんは、人目のない岩陰までやってくると、ゆっくりと上目遣いで、視線をこちらに向けた。)」


笹島「ねぇ鈴木君。女の子に日焼け止めを塗ったことある?」


鈴木「いや、ないけど……。」


笹島「そうだよね。難しくはないんだけど、ちょっとお願いしてもいいかな。私ね、肌が弱くて日焼けは、大敵なんだ。簡単に全身に塗ってもらいたいの。」


鈴木「うん、俺で良かったら……。」


笹島「本当? 嬉しいな。お願いするね。」


鈴木「(流れるような会話で、気がつくと、俺は笹島さんに日焼け止めを塗ることになっていた。これは、直接肌に触れるってことだぞ――。心臓がバクバクしている。あれ? でも――どうして、笹島さん? ビキニのトップまで外しているのでしょう?)」


笹島「後ろから順番に、前も足も。全身、お願いね。」


鈴木「(鼻血が出そうだが、とにかく塗るしかない。ここで、笹島を置いて逃げ出したら、男の恥。それに笹島さんを傷つけるだろう。そんなことは、出来ない。俺は、日焼け止めクリームを、笹島さんの小さな背中に塗った。キメが細かい肌に触れるたびに、全身にビリビリと甘い電撃が走る――。)」


笹島「次は、前をお願い。」


鈴木「(乳首を隠すように腕をクロスさせた笹島さんが、頬を真っ赤にしながら、こちらを向く。)」


笹島「私のおっぱいは、鈴木君にはフルーツにしか見えないから、エッチな想像はしなくても大丈夫でしょ?! 本当に鈴木君みたいな素敵な人が一緒で良かった。あはは。」


鈴木「(――正直に言います! おっぱいにしか見えません!!! うおおおおおおおおおぉぉぉ! 叫んでしまいそうなほどに、ドキドキしている。笹島さんの魔法のようなコミュ力で、こうなってしまったが……。まさか――おっぱいに、日焼け止めを塗る日がくるなんて!!! ……俺は、目をぐっと閉じると、無心で日焼け止めクリームを全身に塗り終えた。すぐに笹島さんは、笑顔で海へと向かった。俺は、呆然と見送ることしか出来ないでいた。)」


……

………………


………………………………


……

………………


………………………………



涼葉「……鈴木?」


鈴木「ん?(その時。涼葉さんが、大きな浮き輪をひとつ手に持って現れた。そして、浮き輪をこちらに差し出してきた。)


涼葉「一緒に、浮き輪に入って。」


鈴木「一緒に……? おお! 楽しそう!(と、言ってしまったが……。ひとつの浮き輪に向かい合って入ると、全身がくっ付きそうで――。波が押し寄せるたびに、おっぱいとか、おっぱいとか、おっぱいが――あたるんだが! 涼葉さんは、クールを保ち、表情を変えないがやっぱり、ドキドキしかしません!)」


涼葉「……抱っこして。誰も見てない。」


鈴木「断る!(みんな、見てますから!!!)」


涼葉「じゃキス。して。」


鈴木「しません!」


涼葉「けち。」


――

――――――バシャバシャ バシャバシャ

――――――バシャバシャ バシャバシャ


鈴木「(そこへ、水しぶきを立てながら、何かが泳いでくる。)」


明彩「こら鈴木っ! 涼葉を独り占めするなっ!」


鈴木「(無理やり浮き輪から引きづり出される。内心ほっとしていた。実はだな、危なかったのだ。日焼け止めを塗ったり、狭い浮き輪の中でくっ付いたり、理性がいつ吹っ飛んでもおかしくなかった。……あれ? ふと、柳生さんが浜辺で座っているのを発見。)お〜い! 一緒に海に入らないのか?」


柳生「鈴木、私に構うな。私は見ている方が楽しいのだ。」


鈴木「もしかして、泳げない……のか?」


柳生「違う! 断じてそんなことはない! 水の上を歩くことも可能だ!」


鈴木「ふぅ〜ん。水の上を……歩く……。泳げない人が……。(やばい吹き出しそうになる。)」


柳生「うるさいっ! あっちいけ!」


鈴木「みんなー! ちょっと来てくれ!」


明彩「なになに?」


鈴木「(明彩と笹島さんと涼葉さんに協力を促して、柳生さんを4人で抱えて、海に放り投げた。ギャーギャー叫んでいるが、そんなのは関係ない! 合宿は、楽しまなきゃ! 嘘! それが合宿だろ!)」


柳生「やめろー。無礼者! 私に触れるな! 死ぬー!!!」


鈴木「(柳生さんが海に沈んでいくのを、みんなでゲラゲラ笑った。)言っておくが、足がつくところだから安心しろ!」


明彩「――それーー!」


鈴木「(今度は、明彩のやつが両手で水をすくい、こちらに向かってかけきた。笹島さんも参戦して、一緒に水をかけて盛り上がる。次は、砂浜で定番のお城作り。それが、終わるとスイカ割り。なんとも楽しい時間はあっというまだった。水平線に夕日が沈んでいくのを見て、旅館へと戻る。髪の毛が海水で濡れた美少女たちの艶やかな姿にドキッとしたことは、俺の中だけに閉まっておこう。――まだ、合宿は始まったばかりなのだ。)」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る