第85話 エッチな誘い

鈴木「(その日の放課後。予想を上回る利用者が図書室に押し寄せた。皆、図書委員になりたい! と、申し出る者ばかり。笹島さんはすべての申し出をひとりひとり丁寧に断っている。さすがに疲れたのか、一度事務室に向かう笹島さんが心配になり、俺も事務室に向かう。)……笹島さん、大丈夫?」


笹島「ありがとう。みんなに図書室に来てもらえて、本当に嬉しいんだけど、ちょっと、疲れちゃったかも。さすがにあの人数はね……。あはは。それでね、鈴木君から、みんなに図書委員の大変さについて、ビシッ、と説明してあげてくれないかな。理由はなんでもいいと思うの。お願いできるかな? こういうこと頼めるのって男性の鈴木君しかいなくて……。」


鈴木「うん。なんとかやってみるよ。頼ってもらえるのは、嬉しいし。笹島さんの力になれるのも嬉しい。あっ、でもさ、どうして全員断るんだ?」


笹島「ここに来てる人たちは、みんな合宿目当てでしょ。今日は私がみんなの前で合宿の話をしちゃったから……。図書委員には、本当に本が好きな人だけ、入ってもらいたいの。柳生さんは、本が好きかどうか分からないけど、鈴木君と明彩さんの友達だったら悪い人じゃないかなって。安心してるの。」


鈴木「……俺も、そこまで本好きかって言われると……、ちょっとあやしいところあるけど……。」


笹島「私知ってるよ――。鈴木君がいつも、可愛い女の子がパンツを見せて恥ずかしそうにしてる表紙のライトノベルを、私がバイトしてる駅前の本屋さんで買ってくれてること――。毎回レジを担当してた訳じゃないけど……。」


鈴木「(……ちょっと待った! その事実は知らなかったぞ。恥ずかしすぎて、声にならないんだが……。)」


笹島「でね、鈴木君がライトノベル好きだってことを知ってからは、鈴木君が買うタイトルのライトノベルが気になって……、私も読むようにしてたら、すごく面白くて、私の方が鈴木君より先に全巻そろえちゃったりしてて。あはは。」


鈴木「……さらりと言うけど、俺――今すっげぇ恥ずかしい。穴があったら隠れたいです……。」


笹島「穴かぁ……。私の穴に隠れてもいいよ。」


鈴木「……笹島さんの穴……?! (それはどこですか? ――まさかだが、下ネタ?! 下半身のあそこですか? 絶対にそれは違う! そう断言したい。少しでも笹島さんをイヤらしい目で見てしまったことを謝りたい。笹島さん、本当にごめんなさい!!! バカな俺を許してくれ!)」


笹島「鈴木君が嫌じゃなければ、入って欲しいかな。実は、まだ誰も入ったことなくて、窮屈っていうか、キツイっていうのかな?! でも、ほらっ。濡れて柔らかくなってから、ゆっくりと入ってきてくれれば、痛くないと思うし……。多分、初めてでも、気持ちいいと思うの。」


鈴木「……。(やめてくれ! エッチなことしか頭に浮かんでこない。)」


笹島「だって、今日の図書室は超満員だよ。利用する人たちの理由は合宿に行きたいってことかもしれないけど、理由はさておき。これは図書室始まっていらいなわけだしね。鈴木君へのご褒美、おっぱいだけじゃ、申し訳ないでしょ。あはは。」


鈴木「(そうですね!!! って……あああぁぁぁあああ!!! 違う違う! 思わず、頷きそうになってしまうのが恐ろしい――。自然な流れで、笹島さんの周囲に吹き抜けている爽やかな桃色の風に、俺まで包まれている気分だ。笹島さんと話していると、いつもこうなってしまう。俺の胸は、ドクドク高鳴り、笹島さんの声、笹島さんの口、笹島さんの鼻、笹島さんの目、笹島さんの耳、笹島さんのその全てに魅了されてしまうのだ。)」






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