第77話 初デートが楽しくなりました?
猫耳娘「いらっしゃいにゃ〜ん♪」
鈴木「(元気よく迎えてくれたのは、着物を着た猫耳のお姉さんだ。接客上手で笑顔を絶やさない気さくな店員さんに見える。店内には和傘がずらりと並び、どれを取ってもデザインよし、質よし。という珍品揃いに見えた。)」
涼葉「この子、宿なし……。だから、新しい傘を選んであげたい。」
鈴木「(涼葉さんの妖魔が手のひらに集まると、そこには昨夜俺たちと一緒に戦ってくれた傘お化けが現れた。)おお、お前生きてたのか! 本当に昨日は助かったぞ!!! また会えて嬉しいよ!」
涼葉「この子が宿としていた傘は、戦いでぼろぼろになった。だから新しいのを買いにきた。」
鈴木「おう、そうかそうか! どの傘も風情があって迷うなぁ〜。(ひとつの傘を手に取った。桜の花びらが散りばめられたオシャレ傘だ。)これなんでどうだ? 可愛いと思うけどなぁ。(涼葉さんに似合うだろうな〜。相合傘でデートとか、うぅぅ〜想像しただけでドキドキする。)」
涼葉「……。」
鈴木「あれ……。ノーコメントかよ・・・。じゃっこちは?」
涼葉「……。」
鈴木「再びノーコメント。なぁ俺たちデートしてるんですよね? なんで無視なんだよ……。(まぁいいか、傘を真剣に選んでいる涼葉さんの姿も悪くない。つぅか涼葉さんって和傘が似合うなぁ。顔がどこか和風なんだろうな。なんかうまく説明できなくて悔しいけど……。ん? 俺がじっと涼葉さんを見ていたのが気に入らなかったのか、ものすごい目つきで睨み返された。……いや違う。猫耳の店員さんを睨みつけている。でも、理由が分からん。)」
涼葉「他の傘、見たい。」
猫耳娘「何をおっしゃいますにゃ? これで全てにゃ。」
涼葉「嘘。」
猫耳娘「当店は妖怪町でも一番の『傘屋』にゃ。なにか不満にゃん?」
――――にゃあああああああーーーー!!!!
鈴木「(猫耳お姉さんが悲鳴をあげたのは、涼葉さんが刀のような鉛筆で商品の一つをスパーンと切ってしまったからだ。)」
涼葉「次、その猫耳を斬る。」
鈴木「ちょお!!! っと待ったあああ!!! 店員さん! この涼葉さんって人はな、嘘はつかないことで有名なんです! 次、本当にその猫耳が斬られますから。なんか知らないが、はやく言う通りにして!」
猫耳娘「わ、わ、分かりましたにゃ。もうこんなひどいお客は初めてだにゃ〜ん。こっちこっちにゃぁ。」
鈴木「(猫耳のお姉さんに連れられて店の奥へと入っていく。と、そこは薄暗い店内で、置いてある傘がどれも妙な光に包まれたものばかりが陳列されていた。――なんだこれ……!?)」
猫耳娘「いっておきますけどにゃ。素人には扱えないにゃ。分かったら、諦めて帰るにゃ。」
涼葉「……。」
鈴木「(今度は、猫耳のお姉さんを無視してるぞ……。)」
猫耳娘「まぁお金を払ってくれるにゃら、こっちは商売だから嬉しいんだけどにゃ〜。」
涼葉「お金ない。」
――
――――――
――――――――――えええぇぇぇえええ!!!
鈴木「このパターンは持ってるパターンでしょ! なんで持ってないんですかああああ?!」
猫耳娘「あぁもう話にならないにゃ! さっき壊した傘代だけでも、払って欲しいにゃ。それもなかったら、妖怪退治して、お金を稼いで返しに来るにゃ!」
涼葉「妖怪退治。それでお金返しに、来る。」
鈴木「(そう俯いてお店を出て行く涼葉さんは、しょんぼりと肩を落としているように見える。まぁ落ち込んでるんだろうな。妖怪退治とか言われても……。とにかく、しばらくはそっとしておいた方が良さそうだ。」
猫耳娘「じゃよろしくにゃ〜。逃げたら、呪い殺すからにゃ〜。」
鈴木「(笑顔で言うセリフかよっ! ここはとんでもない場所だ。さてどうするか。涼葉さんはすっかり元気をなくしたみたいだし。困った……。一人で悩んでいると、突然涼葉さんがこちらを向いて――にかっ――――と、笑った。……ん? どうかしました?)」
涼葉「良かった。デートが面白くなってきた。私なりに退屈なデートで心配してた。もう安心。ふぅ〜。」
鈴木「(いやそこ全然安心するところじゃないですから! ――やっぱ感覚がズレまくってる。楽しくなってきた? はぁぁぁあああ! お金なくて妖怪退治が!!! もうこのデート終わりにしたいんですけど――!)」
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