第75話 ペットな美人は甘えたい

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鈴木「(草原の匂いが頬をなで、目を覚ます。……朝だ。俺は青空の下で、木の陰で横たわっているようだ。それにしても、心地のいい場所だ。あぁここは、町を見渡せる高台にある公園だ。……ぅん? 頭の下には、何やら柔らかい感触がある。ひんやりとして、草原の匂いとはまた別のいい甘い香りもする。これは――女の子の膝の上だああああ?! ワッツ!!! では、一体誰の膝の上なのだろう。俺みたいな男を助けて、ずっと看病していてくれる女神様……。)」


涼葉「おはよ。」


鈴木「……涼葉さん………………。ぉ、ぉぉおはようございます。でも、どうして?!」


涼葉「蘆屋道満が助けてくれた。私の傷も治してくれた。」


鈴木「俺の傷も消えてる……。(そう言いながら起き上がろうとすると、)」


涼葉「ダメ、このまま。まだ膝枕したい。」


鈴木「……ぁっ……ぁ。(思わず恥ずかしくて視線をそらした。顔もまともに見れない。女の子に膝枕なんて……。意識ぶっ飛びそうだ。そんな気分を紛らわせるために、俺は口を開いた。)……昨夜の化け物ってどうして学校に現れたんだ?」


涼葉「あの化け物は、元々は図書室にあった本。読まれなくなった本。廃棄されて、化け物になった。そして図書室にある本に嫉妬した。で、図書室にある本を全部化け物に変えようとしていた。」


鈴木「……涼葉さんは命をかけてまで、図書室を守りたかった。ってこと?」


涼葉「それもある。けど、妖怪退治は私の生きる意味。能力があるから、それを無駄にしたくない。でも、今回は鈴木に助けられた。」


鈴木「……だからお礼の膝枕?」


涼葉「膝枕は、私がしたいから。いやか?」


鈴木「そんなこと、一言も微塵も! すっごく幸せです。涼葉さんみたいな美人の膝は最高です。」


涼葉「私が、美人? ――嬉しい。」


鈴木「そりゃもう学内一の美人! 誰もが二度は振り返るほどの美しい人ですよ!」


涼葉「デートしたい。手、繋ぎたい。」


鈴木「っ……えっと。(急にドキドキしてきました……。)」


涼葉「鈴木、デートしたことある?」


鈴木「いや、ないけど……。」


涼葉「今日は学校休みだし、このままデートしたい。」


鈴木「よーし、そうしよう!(その勢いのまま立ち上がり涼葉さんの姿を見た俺は、慌てて背中を向けた。)」


涼葉「なに?」


鈴木「(なんと涼葉さんは、スカートを履いていなかったのだ。ってことはだな、俺はパンツ姿の涼葉さんに膝枕されていたのか――! やばいだろ。鼻血出てないか……?)……涼葉さんスカートはどこですか?」


涼葉「スカートは、水洗いしたから干してある。」


鈴木「(見上げると、スカートはゆらゆらと木の枝で、気持ちよさそうに揺れていた。ドキドキする気持ちと眩しい太陽が重なり、世界がキラキラしてみえる。)」


涼葉「スカート履かせて。」


鈴木「……ってえ?」


涼葉「私は、鈴木のペット。――甘えたい。」


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