第71話 甘酸っぱい放課後

笹島「――鈴木君、仕事中だよ!」


鈴木「(笹島さんに背後から話しかけられて、はっとした……。その瞬間、涼葉さんが俺の手をぐいっと引き寄せた。――あろうことか、笹島さんも負けじと俺のもう片方の腕を引っ張る! 腕が伸びて体があああ、)引きちぎれるぞおおお!!!」


――ごめんなさい。


鈴木「(と、2人はいっせいに腕を離してくれたのだが、すぐに火花を散らして、睨にらみ合い――女の戦いって怖いんですけど……。)」


――パチパチ

――ピカピカ


鈴木「……喧嘩は止めろ。」


涼葉「鈴木は、口出し無用。」


笹島「そうよ。鈴木君は、静かにしてて。」


鈴木「笹島さんここ図書室、静かにしないと……。」


笹島「っあ!! そうだね。鈴木君行きましょう。そろそろ図書室を閉める時間だから、一緒に手伝ってくださいね。」


鈴木「(と、再び腕を引かれて、強制的にカウンターまで連れ戻された俺。それから利用者さんも全員退出し、閉めの作業を終えた。最後は図書室の鍵を閉めて、おしまい。ふぅ〜〜。なんとか初日の図書委員としての仕事が終わった。いろいろあったけど、悪くないって言うか、すっげー楽しい時間だった。)」


明彩「1日お疲れ様! 私、カクヨム作家さんと用事あるから先に行くね!」


鈴木「っは!?(用事ってなんだよ? そんなこと俺に聞く権利はないかぁ。)……作家さんの邪魔すんなよ。」


明彩「あんたに言われなくても分かってるわよっ! それじゃーーー!!」


鈴木「(いつもより楽しそうに走っていく明彩を見ていると、なんつぅか……妙に胸が騒ついた。……用事ってなんだろう。まさか、告白とか?! いやいやそんないきなり。いや、あのバカに限ってはありえるかもな………………。なるべく明彩のことを考えないように、下駄箱で靴を履き替えて、校門を出た。その隣にはずっと笹島さんがくっつくように、歩いて来ている。いきなり笹島さんが、頬に冷たい炭酸ジュースを当ててきた。)」


鈴木「っわ!!!」


笹島「鈴木君さっきから、ぼんやりしてる。私と一緒じゃつまらないみたい?」


鈴木「いやいやすっごく楽しいよ! (おっぱいのご褒美も最高だったし。あれは、マジで今思い出しても、ドキドキする。それに、こうして一緒に帰れるなんて想像もしてなかった……。なにを話せばいいのか、普通に困るだろ……。)」


笹島「そっか。それを聞いて安心したよ。今日は本当にありがとうございました。炭酸で乾杯しよ!」


鈴木「(笹島さんが上目遣いで、にっこり笑う。)俺は別に何もしてないっていうか。なんの力にもなれてない。」


笹島「そんなことないよ。利用者さんがすごく増えた。全部鈴木君のおかげだよ。それともご褒美のおっぱいが、たりなかった?」


鈴木「そんなことないですっ!」


笹島「冗談冗談。あはは。それじゃ、改めて乾杯しよう。1日お疲れ様でした。」


――――――――乾杯!


鈴木「(笹島さんってやっぱりすごい。どこまでも自然体で夕陽と重なる笑顔が、炭酸の泡のように甘酸っぱく弾けている。本当に綺麗だ――。」


笹島「ぁああ、炭酸って美味しいね!」


鈴木「(あっ・・・・。俺はその時、何かを忘れていることに気がついた。朝に降っていた雨はやんで・・・やばい。傘――傘お化けを教室に忘れて来てしまった。)」

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