第62話 美少女とライトノベル友達
鈴木「(教室に入ったところで、笹島紡喜(ささじまつむぎ)さんと目が合った。先週、駅前の本屋でライトノベルを買った時にレジをしてくれた、クラスメイトだ。カバーをかけた文庫本を読みながら、視線だけを上げて、チラチラと俺の方を見てくる。きっと変態扱いされている――。めちゃくちゃ警戒されているとしか思えん。しかし、俺は妹と付き合うことを回避した。よって、俺はシスコンではない。でも誤解されているだろうな。それなら……よしっ!)」
鈴木「あの笹島さん……。」
笹島「あっ、鈴木君。」
鈴木「(笹島さんは、文庫本を慌てて閉じて、前髪を何度も整えている。気のせいだろうか、目がキラキラしている。)あの、この前のことだけど……。」
笹島「えっこの前?」
鈴木「俺が本屋さんで、買ってた本のことだけどぉ。」
笹島「あぁうん、あれ全部、――神作だよね。主人公のキャラが立ってて面白いよね。私は特に『妹はエロマンガ先生』が好きでアニメも全部揃えてるよ。それに妹キャラってたまらなく可愛いよね。」
鈴木「(っ? 今何と言いました? 俺が想定していた内容とは全く違うぞ。)」
笹島「私も、ライトノベル大好きなんだ。だから鈴木君とはいい友達になれるかもって、あれから期待してたんだよ。」
鈴木「っ……。俺と友達に……。(なんだこの笹島さんのコミュ力の高さ――! さりげなく自己主張――。そして笑顔も――自然だ。おまけに、いつのまにか俺の緊張をも和らげるトリプル効果。)」
笹島「――――ライトノベル友達! って、ダメかな?」
鈴木「(にっこりと自然に頬を釣り上げて笑う優しい笹島さんから、キラキラと光が放出されている。)ダメっていうか……俺も友達になれたら嬉しい。」
笹島「良かったぁ! ライトノベルの話題で盛りあがれる友達が欲しかったんだけど誰とも仲良くなれなくて……。深夜に男の子のフリしてチャットして楽しんだりしてたの……。私ってちょっと変だよね。あはは。」
鈴木「(笹島が言うと全く変な感じがしない。むしろ爽やかな香りが風にのって流れてくるようだ。)俺もライトノベル好きだから、いろいろ話したい。」
笹島「嬉しいなぁ! ねぇねぇ昼休みに、図書室に遊びにこない? 私ね、図書委員で、丁度今、私が企画した展示してて、鈴木君にも見てもらいたいんだけどぉ……。昼休み予定ある?」
鈴木「(穏やかな川が、清らかに流れていくような会話。たった1分程度で、昼休憩に2人きりになる約束。これ、奇跡だろ……。)」
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