第61話 抱っこ、ドキドキ

明彩「それは――傘 お 化 け。見た感じだと、可愛らしい子ね。あっ、そっか! 一緒に遊びたいんだと思う!」


鈴木「遊びたいって言ったって……。化け物には変わりないんだろ?!」


明彩「そんな風に言ったら、かわいそう。ほらっ見なさいよ! 傘お化け、泣いてるでしょ! あんたのせいだからね!」


鈴木「マジで泣いている。じゃ……傘交換しようぜ!」


明彩「こらっ。勝手に私の傘持っていくなーーー!!!」


鈴木「嫌ですよぉーだっ!」


明彩「ふふふふ、馬鹿ネギ男は、分かってないようね。傘お化けがついてるのは、傘の問題ではない――! あんたに憑いてるのだ! お化けがあんたを追いかけて走りだしたわよ。」


鈴木「なんじゃこれえええーーー!!! 傘お化けがピョンピョン飛び跳ねて、こちらに向かってくるぞ。なんで俺に? おおお、傘の中に入った。」


明彩「だから言ったでしょ。あんたと一緒に遊びたいんだって。」


鈴木「そんなこと言われても……、遊ぶってどうすればいいんだ?」


明彩「知らないわよっ」


鈴木「何んでもいいから、教えてくれよぉ。頼む!」


明彩「うぅぅん、そうね・・・普通に傘をさして、歩いてればいいんじゃない?! それで、時々話しかけてあげれば喜ぶ、……と思う。」


鈴木「へ〜やっぱりお前って詳しいな。(それから、雨の中を傘をさして、学校へ向かう。そして時々傘お化けに向かって、話しかけた。はたから見たら、ただの独り言)俺って、変な奴だろうな。」


明彩「気にしないの。それで喜ぶんだから。」


鈴木「だったらいいけどよ。……っておいっ! マジで傘お化けが笑っるぞ! 妖怪もこうやって見ると可愛いもんだな。ちょっと見てみろよ!(明彩が傘を覗き込むように、近づいてくる。)」


……

………………


明彩「…………きゃっ。」


鈴木「(足を滑らせた明彩を、とっさに抱きかかえるように捕まえた。目が合う――。こいつ、こんな可愛い顔してたっけ・・・? 心臓がドキドキする――。)」


明彩「ぁっ……。ぇっと………………。」


鈴木「……っ………………。ぁ…………あっそうだ……。ほら傘お化け、見ろよ。」


明彩「………………ぅ……ぅん……。」


鈴木「可愛いだろ。(俺がそう言うと、明彩は頬を真っ赤にしたまま、俺との距離を取った。そして、大きく息を吸って平常心を保とうとしている。あいつもドキドキしてたのかな………………?)」


――――――

――――――――――――


明彩「――あんたって、昔から優しいのだけは、変わってないね。」


鈴木「(え―――? ……昔って?)」


明彩「行くよ! 学校! 急がないと遅刻しちゃうよ!」


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