第53話 妹と付き合う

明彩「このお店で穂香ちゃんのプレゼントを買ってくるから、待っててね。」


鈴木「ん?(顔を上げて、看板の文字を読む……。ちょっとHな下着がそろうお店――。)お前、俺の妹は14歳だぞ。(と、言ったものの聞こえていないのだろう。明彩はスタスタと店内に入っていく。待つこと数十分。買ったばかりの下着を俺の前で、丁寧に見せてくれた。)」


鈴木「おいっ、スケてるぞ……。」


明彩「この下着を穂香ちゃんがつけてるところ、あんたが見たら承知しないから!」


鈴木「誰が妹のスケスケ下着姿なんか見るかっ。」


明彩「エッチなこと想像したら、許さないから。でもまぁ信じてあげるわ。そっちはプレゼント決めたの?」


鈴木「俺は、こっちの店で縫いぐるみを買う予定。穂香は縫いぐるみが好きなんだ。」


明彩「へぇやっぱり14歳って子供よね。私だったら縫いぐるみなんてもらっても全然嬉しくない。」


鈴木「穂香は子供なんだよ。」


明彩「キャー、鈴木君は子供と付き合おうとしてるのね。法律に引っかからないといいんだけど。心配だわ。」


鈴木「お前が言うと、悪意しか感じん。(明彩を無視して縫いぐるみを買うために店内に入ると、右を見ても、左を見ても、もふもふした可愛い縫いぐるみがぎっしり並んでいた。縫いぐるみなんて、どれも同じに見える……。)」


明彩「か、可愛いーいい!」


鈴木「(縫いぐるみを抱っこする明彩の表情は、目と口がとろけていた。)お前が一番子供っぱいな……。」


明彩「だって、このワンちゃんかわぃぃい!」


鈴木「あっそう。」


明彩「私これ、自分に買う。」


鈴木「そんな犬のどこが可愛いのか分からん。」


明彩「可愛いの! 穂香ちゃんのプレゼントもこれにしたら絶対に喜ぶと思う!」


鈴木「そこまで言うなら、分かった。(結局、明彩は犬の縫いぐるみと、獏(ばく)の縫いぐるみを大切そうに買っていた。)」


鈴木「それから涼葉さんと、駅前で待ち合わせ。俺たちが駅に着くと、水玉のワンピース姿の涼葉さんを発見した。彼女の周りだけはいつ見ても淡い光に包まれているのですぐに分かる。今日も涼葉さんは、とても――クールで可愛い。)」


明彩「涼葉ー!」


鈴木「(明彩が呼ぶと、涼葉さんは顔を上げて、にっこりと笑った。その笑顔に胸がドキッとする。それから、ピザとケーキを選んで、家に着く頃には、丁度お腹がすいていた。)」


鈴木「ただいまー!」


穂香「お兄ちゃんー、おっかえりー! げっ、なんで明彩さんと涼葉さんまで?」


鈴木「仲良くなったんじゃなかったのか?」


穂香「そうだけど、お兄ちゃんは渡さない。」


鈴木「今の言葉は、これを見たら撤回したくなるぞ〜。ほらっ、2人から美味しいプレゼント!」


穂香「私を食べ物で釣ろうなんて……。」


鈴木「ヨダレがすごいな。さあ上がって上がって!(リビングで、ピザとケーキを広げると、女子たちの目はハートに変わっていた。食べ物の力は凄まじい。)」


――いただきまーす。


鈴木「(涼葉さんが、小さな口を大きく広げてケーキを幸せそうに食べる顔が、たまらん。あぁ幸せだ〜!)」


穂香「そうですわ。丁度いい機会ですし、」


鈴木「ん?(穂香が、ポケットから何かを取り出した。)」


穂香「2人にも、この記念すべき瞬間を見届けて頂きましょう。さぁお兄ちゃん、サインをお願いします!」


鈴木「あぁあああ――。(開いた口が外れそうになったのは、俺と穂香が付き合うことが記された契約書を、突きつけられたからだった。)」


穂香「約束、守ってくれるよね――?」

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